異業種・業界への新規参入を考える際に明確にしておくべきこと(Vol.274)


コーポレート・アドバイザーズがお届けする「中村 亨の【ビジネスEYE】」です。

「電力自由化 新規参入280社で「バブル」懸念」 (週刊エコノミスト/2016年4月26日号)

電力自由化により新たに生まれた年7.5兆円とも8兆円とも言われる電力市場(家庭向け+小規模事業者向け)。新規参入事業者の数は続々と増え続け、4月18日現在で286社です(経済産業省)。事業者数の増加が『バブル』の様相を呈しています。本日のメルマガでは、“新規参入”について触れてみたいと思います。

“バブル”の様相を呈する電力業界

新規参入はすでにバブル

規模の大小、業種の如何を問わず、“電力自由化”を“ビジネスチャンス”と捉えた多数の事業者が続々と参入しています。登録小売電気事業者の数は、4月18日現在で286社。審査中の事業者を含めれると、400社近くにまで増えると予想されます。「薄利多売の市場」と一線引かれていた業界が変革期を迎えていますが、参入状況をみる限りでは、すでに“バブル”の様相を呈しています。

いずれどこかで弾ける可能性もあります。

電力小売における商品は、どの事業者も例外なく『電気』です。それゆえ商品自体に“強み”を求めることができません。「電気料金」は、発電施設・設備を保有していれば、発電コストの削減を幾分料金に反映させることは可能ですが、『託送料金(電力会社が張り巡らせた電柱・電線を借りる料金のこと)』があるため、各社とも大幅な値下げができない仕組みとなっています。それゆえ、自社サービスやポイントサービスなどと連携するなど、パッケージ化することが、収益ベースに乗せる近道となりそうです。

電力事業はフロントエンド商品

ここで危惧すべきポイントは…ずばり『値下げ競争』でしょう。ユーザの一番の関心所である“料金”。最もシンプルで効果的な施策の一つとして『値引き』が挙げられます。ただし、アプローチ方法を一歩でも間違えれば、薄利である電気料金の利益を更にを削り、パッケージ化した自社サービスを実質的に値下げすることになりますので、本末転倒な消耗戦へと陥ります。

これを回避するためには、『値引き』による顧客獲得を早々に切り上げ、電力事業を本業へ顧客を誘導するツールと割り切り、バックエンドにしっかりした収益商品を準備するべきかも知れません。

2017年4月のガスの小売全面自由化の影響

来年4月にはガスの小売全面自由化がスタートします。これにより、電気・ガスのセット販売が可能となります。今回の電力自由化と同じ動きが、ガス業界でも起こるでしょう。電気もガスも飽和状態となるなかで存在感を示すのは容易ではありません。

「電力事業で手詰まり感を覚えたから新しいガス事業に取り組んでみよう」程度の考えであれば参入すべきではないでしょう。異業種・業界への新規参入を考える際には、

1.自社(本業)の強み
2.本業との親和性(Affinity)
3.本業への相乗効果(Synergy)
4.具体的な目標数値と撤退ポイント

などを明確にしておくことが必要になります。

 

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