社内からブランドがにじみ出る。社内向けの「価値づくり」とは(Vol.272)


コーポレート・アドバイザーズがお届けする「中村 亨の【ビジネスEYE】」です。

「『属している』と感じられる場所にこそ、本当の価値があるんだ」(トーマス・ヘザウィック/COURRiER JAPON/2016年4月)

2004年に最年少で英国王立芸術協会から「王室工業デザイナー」の称号を与えられたトーマス・ヘザウィック氏の言葉です。同氏がこれまで手掛けた代表作品には、上海万博の英国パビリオン(2010年)やロンドン五輪の聖火台(2012年)などがあります。また最近では、デンマークを拠点とする大手設計会社と共同でgoogleの新社屋設計や米マンハッタンの人工島プロジェクトにも参画しているそうです。

本日のメルマガでは、ヘザウィック氏の持つ“こだわり”に焦点を当て、社内向けの「価値づくり」について触れてみたいと思います。

ヘザウィック氏の“こだわり”

ヘザウィック氏は、極めて厳格な父親のもとで育ちました。褒められることもなく、絵を描けば「実物の見え方と違う」と一刀両断されたそうです。この経験が強い“こだわり”を生むことになります。それは『なぜ物事が今の形になったのか』ということです。

「なぜアイスクリームはあんなに小さいのか」
「どうしてあのビルは不愉快に見えるのか」

上記の例のように、通常であれば『然もありなん』とされ、深く考える必要がないと一笑に付されてしまうようなことです。ただ、改めて考えてみると、明確な答えを導き出すのは至難であると気付かされます。

同氏はこの強いこだわりを軸に、『自らの手』で『人々を育む生命体(=街、同氏の形容)』を変えていきます。冒頭のフレーズが指す『属している』と感じられる場所、すなわち公共の場を創るため、同氏は「ものづくり」から「価値づくり」に昇華した取組みを実践しているのだと感じます。

新入社員はドローン型

街中で真新しいスーツに身を包み、緊張な面持で佇んでいる姿をよく見かけます。今年も多くの企業が新入社員を迎えられたのではないでしょうか。毎年3月に公益財団法人日本生産性本部から発表される『新入社員の特徴』によると、今年は「ドローン型」と呼ばれるそうです。

ネーミングの理由は次の通り。

・外部環境(就職活動の日程変更など)に煽られつつも、自律飛行で志望企業へと着地した。
・使用者次第で機体を損傷し、紛失(早期離職)の恐れがある。
・長時間の酷使には耐えられず、ルールを守った運用や一定の技量が要求される。

良し悪しありますが、これは今年に限ったことではありません。企業としては、個々の特性を見極め、いかに適材適所を実践できるかが最大の関心所となりますが、それのみに固執してしまうと、早期退職に追い込むことになってしまいます。

早期退職はビジョンのズレから生じる

理由は簡単です。新入社員が思い描くビジョン(理想)と会社としてのビジョンに本質的なズレが生じているからです。そのため、いざ配属となれば、目先の与えられた仕事に対する不満、慣れない人間関係などにしか目がいかなくなり、「自分に合う企業は他にある」と安直な考えから、早期退職に向かってしまうのです。

語弊があるかも知れませんが、新入社員に迎合する必要はまったくありません。必要なのは「社会人」として、「会社」としての目線を意識付けさせることです。本質的なズレを確認した上で理解し合うことができなければ、むしろ早期退職がお互いのためになります。

『属している』感覚に価値がある

冒頭で紹介したフレーズ、「『属している』と感じられる場所にこそ、本当の価値があるんだ」。属することで、人は個では及ばないような大きなミッションやビジョンを実現させることができます。チーム、部署、そして会社…、属する対象の規模に比例してその効果も大きくなります。

広く世間に対するブランディングに注力してしまいがちですが、社員一人ひとりが『属することを誇りに思える』ような、社内向けの「価値づくり」を同時並行で行うべきでしょう。

なぜ今日の会社があるのか、なぜこのサービスラインを提供しているのかなど、社内に平然と潜んでいる『然もありなん』を、生の声で伝えることも「価値づくり」の一環です。これに共感できた社員は、きっと活躍してくれることでしょう。社内からブランドがにじみ出てくる企業こそ、本当の意味で飛躍する企業であると私は思います。

 

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