一体化の前に要チェック!暦年贈与に頼らない相続税の節税手法(Vol.548)


中村亨の「ビジネスEYE」です。

今年も残すところ1ヶ月となりました。
相続税・贈与税の一体化への改正は、早ければ来年施行されると言われています。改正された場合には、今までポピュラーな方法であった、暦年贈与課税による節税対策が効果的に行えなくなります。

先日のビジネスEYEでは、改正前に行いたい生前贈与についてお話をしましたが、改正によって暦年贈与課税による節税対策(生前贈与)ができなくなったとしても、相続税の節税手法は他にもたくさんあります。今回のビジネスEYEでは改正後を見据え、暦年贈与に頼らない相続税の節税手法についてお話したいと思います。

1. 生命保険の非課税枠の活用

相続税には生命保険(死亡保険金)の非課税枠というものがあり、下記金額まで相続税が課税されずに死亡保険金を受け取ることができます。
【 生命保険非課税枠 = 法定相続人の人数 × 500万円 】

例えば法定相続人が2人の場合は、2人×500万で計1,000万円まで非課税として保険金を受け取れるのです。
もし定期預金など、塩漬けになってしまっている余剰資金がある場合は、生命保険に預け替えるだけで、税金の負担なく子供に継がせることができます。

相続のご相談を頂く方の中には、生命保険のご加入はあるものの、少額の保険にしか入っておらず非課税枠が余っている方、ご年齢やお体の状況から加入できないとの思い込みから、全く検討されていない方が多くいらっしゃいます。

保険の種類によっては、ご病気などの審査が緩やかなものや、ご高齢の方でも加入できる保険もございます。条件にご年齢が伴う対策であり、早めのご対応をお勧め致します。

2.各種贈与の非課税制度

生前贈与の中には所定の条件を満たすことで、一定の金額まで非課税で贈与することができる制度があります。

【1】直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

・直系尊属から資金の贈与を受け、住宅を新築、取得・増改築等をした場合で、省エネ住宅や消費税率等の一定の要件を満たすと最大1,500万円(※)まで贈与税が非課税。(※)2021年11月末日時点での最大金額

【2】直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税

・30歳未満の受贈者が直系尊属から教育資金の贈与を受けた場合、受贈者1人あたり最大1,500万円まで非課税。

【3】直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税

・20歳以上50歳未満の受贈者が直系尊属から結婚・子育て資金の贈与を受けた場合、受贈者1人あたり1,000万円(※)まで非課税。(※)このうち結婚資金に充てられる部分は300万円まで非課税

 

この3つの非課税制度は生前対策の一つとしてよく利用されています。教育資金と結婚資金の非課税の期限は、令和5年3月31日までですが、住宅取得資金の非課税については、令和3年12月31日までとなっております。期限までに資金提供及び契約を締結する必要がありますので、ご検討の方はお早めに手続きを進めることをお勧めします。

3.資産の組み換え

相続財産のうち、現金には非課税や減額などの特例はなく、現金の残高に対して課税されてしまいます。そこで現金をマンションなどの不動産に組み替えることで、相続税評価の圧縮を狙うという方法があります。

なぜ不動産への組み換えが圧縮につながるのかご説明しますと、マンションを含む不動産は相続、贈与の計算上、基本的に時価で評価を行わず、下記の基準で評価を行います。
・建物部分は固定資産税評価額を基に評価
・土地部分は路線価などを基に評価

さらにマンションの場合、土地については全体の更地価格に敷地権割合を乗じる関係で評価額は小さくなる傾向にあります。上記のような理由から、時価との乖離によって、資産価値を担保しつつ相続税の評価減対策が可能となります。

また、単に保有するだけではなく賃貸に出す事によりさらなる評価減が可能です。例えば土地の評価額7,000万円、建物の評価額が3,000万円で合計1億円のマンションの一室を賃貸に出し、その地域の借地権割合が70%、借家権割合30%、とした場合、

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・土地は貸家建付地評価となり、
土地の評価額 ×(1-借地権割合×借家権割合)
7,000万円 ×(1-×0.7×0.3)=5,530万円・・・①

・建物は貸家の評価となり
建物の評価額 ×(1-借家権割合)
3,000万円 ×(1-×0.3)=2,100万円・・・②
 
①+ ② = 7,630万円・・・③
1億円 - ③ = 2,370万円
となり、例題のケースでは賃貸に出すことで2,370万円減額されることになります。
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また、同じように時価との乖離を狙った方法として、都心などの一等地の不動産を、少額から購入できる不動産小口化商品といったものもあります。大幅な評価減が狙える方法ではありますが、不動産購入後に短期間で実施した贈与や、数か月後に発生する相続を予見して物件を購入し、相続後にすぐ売却する場合など、相続評価の圧縮だけを狙った租税回避行為と認定された場合には、時価で課税をされてしまうリスクがあります。

不動産への組み換えは、短期的な対策としては活用しにくい反面、中長期的に保有して、資産を圧縮するという面では、改正後でも有効な対策となります。生前贈与を封じられた後の余剰資金の活用方法として、是非検討したい対策のひとつです。

相続税・贈与税の一体化については、その改正内容によっては、検討していた対策が今後できなくなってしまう可能性があります。
日本クレアスであれば、ご紹介させて頂いた方法はもちろん、その他の対策方法についてもご相談、お手伝いをしております。相続税の生前対策はお早目にご相談ください。

<問合せ先>
日本クレアス税理士法人 相続サポートセンター
電話:03-3593-3243
お問い合わせフォーム: https://creas-souzoku.com/free-consultation-form/

※広報誌ANGLE最新号では、相続税と贈与税の一体化について改正の背景から詳しく
解説しています。以下Webサイトにてご覧いただけますのであわせてご参考ください。
https://creas-souzoku.com/columns/news/a11997/

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