経営メモ「インバウンドは、日本を救うか?」(Vol.35)


「2020年の東京オリンピックまで、或いはその数年前まで今の好景気は持つだろう」または「インバウンドがあるから大丈夫だ」といった声をよく耳にします。

インバウンドとは、様々な場面で使われる言葉ですが、上記の文脈では「訪日外国人旅行者」ということになります。訪日外国人旅行者が増加しているには事実ですので、今回は、インバウンドがどれくらい景気にインパクトがあるのかを皆さんと一緒に考えてみます。

訪日外国人旅行者数の推移と施策

2003年 ビジット・ジャパン・キャンペーン開始(521万人)
2006年 観光立国推進基本法(733万人)
2008年 観光庁を新設(835万人)
2011年 東日本大震災(621万人)
2013年 アベノミクススタート(1,036万人)
2014年 訪日外国人旅行者数(対前年比29.4%増)(1,341万人)
2020年 目標値(東京オリンピック開催)(2,000万人)
2030年 目標値(3,000万人)

参考:観光庁

<備考>アベノミクスによりビザ発給の緩和が実施されています

ちなみに、2014年の観光客(旅行者)が多い国のランキングは以下のとおりです。

1位 フランス(8,370万人)
2位 アメリカ(7,475万人)
3位 スペイン(6,499万人)
4位 中国(5,562万人)
5位 イタリア(4,857万人)

参考:日本政府観光局(JNTO)「世界各国、地域への外国人訪問者数ランキング」

鍵を握るのはアジアの中間所得層

私は日本の2020年の目標も、2030年の目標も十分に前倒しで達成すると思います。この2014年のランキングでは、タイが14位(2,477万人)、日本は22位(1,341万人)にランクインしていますが、「日本は今後、3千万人の目標を達成できるだろう」と直観しております。なぜなら今後、アジアの中間所得層が勢力を増してくることで、先進国である日本へアジアの観光客が殺到するからです。

インバウンドはGDP目標値の1%にも満たない

では、インバウンドは経済にどれくらいのインパクトがあるのでしょうか。

観光庁の平成27年版観光白書では、訪日外国人旅行客の消費額は約2兆円だそうです。仮にこれが3千万人となると、ざっと約5兆円きぼになります。安倍首相は、経済規模の目先のGDP目標値を600兆円としていますので、実はインバウンドはその1%にもおよびません。そのため、インバウンドがオリンピック後の日本を救うか?というとそうすんなりはいかないと思われます。

訪日外国人2,000万~3,000万人時代に向けて、不足する客室は1万室とも2万室ともいわれており(参考:週刊ダイヤモンド2015/3/21)、ホテルの建設、あるいは話題の「民泊」の規制緩和等、いわゆるインバウンドで恩恵を受ける産業が思い浮かぶのは救いですが…

経営者は、今からオリンピック後の戦略を考える必要がありそうです。

 

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