2017.08.17 会計・税務

クラウドファンディングについて知ろう!

「ここをもうちょっと使いやすいように改良された商品があればいいのに…」
「この社会問題について解決策を考えている組織があるならお金を出してもいいのに…」

普段から何気なく使っている日用品にちょっとした不便を感じたり、関心のある社会問題の解決の役に立ちたいと感じたりすることってありますよね。インターネットの普及によって、このような一般消費者のニーズの受け皿となりつつあるのが、クラウドファンディングの仕組みです。今回は、クラウドファンディングが従来の資金調達方法と比べてどのような違いがあるのかについて解説させていただきます。実際に多くの資金を集めた実績のあるクラウドファンディングサイトを紹介させていただきますので、これから新しい事業にチャレンジすることを考えている事業者の方も参考にしてみてくださいね。

   クラウドファンディングとは?   

クラウドファンディングとは、文字どおり「クラウド(群衆や一般大衆という意味)」から小口の資金を集めて、新しい事業や製品開発の資金とするファイナンス手法です。これから事業を始めるという事業者が銀行から1000万円の融資を引き出すのは大変なことですよね。しかし、アイデアやコンセプトが面白いものであれば、1万円の資金をクラウドファンディングを使って1000人の人から集めるのはそれほど難しいことではないかもしれません。
このように、クラウドファンディングを活用すれば、まだ信用力の低い事業者でも比較的低いハードルでお金を集められる可能性があります。事業者の立場では、集めた資金を資金公募の際に約束した資金使途として使う限り返済義務を負わない自己資本にできる(つまり返済義務を負わない資金にできる)というメリットがあります。また、どのような事業や商品に対してニーズがあるのか?をリサーチするためのツールとしての機能も期待できるでしょう。

   クラウドファンディングの種類   

クラウドファンディングには、どのような趣旨のもとにお金を集めるのかによって以下のような分類があります。

寄付型

寄付型は、主に利益を目的としないプロジェクト実施のための資金調達を行うクラウドファンディングです。災害復興のために被災者に対して支援金を行き渡らせるプロジェクトや、チャリティイベント実施のための資金調達などが主な用途としてあげられます。ただし、寄付型のクラウドファンディングを実施するためにはプラットフォームによっては審査が行われることがあります(非営利団体でないとプロジェクトを実施できないなど)。

購入型

購入型は、もっとも広く利用されているクラウドファンディングです。ちょっとしたアイデアを応用した育児グッズや、これまでになかった形の便利なモバイル製品など、まさに「かゆいところに手が届く」ような商品が提案され、実際にプロジェクト実行に至っています。資金提供を行なった人は完成した製品をいち早く使用できるほか、特典商品などを受け取れるなどのメリットがあります。

出資型(投資型)

出資型は、資金を出した人に対して事業から何らかの形で経済的リターンを与える形のクラウドファンディングです。出資型のクラウドファンディングは資金提供者に対して株式を発行したり、ファンド持分を提供する形のほか、単に貸付として資金を渡す方法があります。出資型のクラウドファンディングは、従来の一般的な資金調達方法を、クラウドファンディングのプラットフォームを活用してより広い大衆に対してアピールする側面が大きい方法と言えます。

   有名なクラウドファンディングサイト   

これまでに多くの資金を集めた実績があるクラウドファンディングサイト(プラットフォーム)としては、以下のようなところが有名です。

ReadyFor(レディーフォー)

日本最大級のクラウドファンディングで、若干29歳の女性事業家の米良はるかさん(現在は代表取締役)が設立したクラウドファンディングです。寄付型を中心に、これまでに4000件以上プロジェクト、20億円以上の資金調達が行われています。クラウドファンディング – Readyfor(レディーフォー)

CAMPFIRE(キャンプファイヤー)

主にカルチャー関連の寄付型プロジェクトで資金調達実績が豊富なクラウドファンディングです。目標調達金額に達した場合にのみプロジェクトが開始する「All-or-Nothing」方式や、目標金額に対する達成率にかかわらずプロジェクトを実施する「All-in」方式があります。クラウドファンディング – CAMPFIRE(キャンプファイヤー)

makuake(マクアケ)

サイバーエージェントグループが展開しているクラウドファンディングです。アイデア商品を展開する購入型のプロジェクトが多く掲載されています。無名の事業者のみではなく、デンソーやシャープ、エアウィーブなどの有名企業が新規事業の資金調達に使っている例も多いです。クラウドファンディング - Makuake(マクアケ):サイバーエージェントグループ

   クラウドファンディング利用時の注意点   

クラウドファンディングを利用する場合の法律上のルールについても理解しておきましょう。主に問題となるのは①税金計算の扱いと、②購入型の場合の瑕疵担保責任です。

(1)税金計算の扱い

資金提供者とて気になるのが、出資した場合に損金算入や寄附金控除と言った形で税制上の優遇を受けられるかどうか?です。結論からいうと、法人としての出資の場合は一部損金不算入(出資額の一部は損金にできます)、個人の場合は経費や寄附金控除の対象とはなりません。一方で資金提供を受けた側の立場としては、法人の場合には雑収入などの形で益金に算入され、個人の場合には贈与税が課せられます(ただし、贈与税には年間110万円までの非課税枠があります)

(2)購入型の場合の瑕疵担保責任

購入型のクラウドファンディングで問題となりやすいのは、提供するプロダクトの瑕疵担保責任です。瑕疵担保責任というのは、簡単にいうと事業者が商品を作って売る場合に、消費者側の期待通りの商品を提供しないといけないという事業者側の責任のことです。もし公募時に約束した内容と異なるプロダクトが提供された場合には、資金提供者による契約の解除や損害賠償の責任が生じる可能性があります。もちろん、クラウドファンディングは「これから新しく事業を始める」と言う人に対して小口で資金を提供することを目的とした資金調達方法ですから、品質についての許容範囲については一般的なメーカーに対して課せられる瑕疵担保責任の内容からは軽減される可能性が高いです。現在のところは訴訟となったようなケースが少ないために今後の裁判例の蓄積や法改正によるルール構築が期待されるところです。

   まとめ   

今回は、クラウドファンディングを使った資金調達方法について解説させていただきました。クラウドファンディングは融資とは違って万が一事業がうまくいかない場合にも返済義務を負わない資金調達方法です。最近ではメジャーになりつつある資金調達の1つですので、オリジナリティのある事業をスタートしようと考えている事業者の方は、選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

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