2025.05.28 相続

相続税の税務調査は他人事?
相続調査の実態について

国税庁から令和6年12月に発表された相続税の税務調査の状況によりますと、令和5事業年度の実地調査件数は8,556件、⽂書や電話による簡易な調査が18,781件、同じ年度の相続申告書の提出件数が155,740件ということを考慮しますと、約18%程度の確率で税務調査の問い合わせが来ていることになります。

また、その内申告漏れ等で指摘を受けた件数が7,200件であるため、実地調査で税務調査が入りますと、約85%の割合で何らかの修正が発生していることになります。
税務調査は「資産家に対して行われる」「相続人に非があるから行われる」と考えられがちですが、実際には「相続の状況しだい」で誰に対しても行われるものです。

そこで今回は、相続の税務調査の概要とペナルティついてご説明いたします。

■税務調査とは?

そもそも税務調査とは、特定の納税義務者(※相続税の場合は遺産を受け継いだ人)への課税額が正しいかどうかチェックするため、国税通則法等で定められる権限に基づいて行われるものです。
調査が行われる際は、事前に管轄税務署から相続人の代表者へ電話確認が行われ、その後のヒアリングや相続開始当時の資料提出を通じ、当初申告があった課税額に誤りがないか精査されます。
なお、実施される税務調査の大半は、納税義務者の協力のもと成立するとされる「任意調査」です。任意調査時に考えられる罰則は、後述の追徴課税(加算税)だけです。調査官からの質問や書類提出の要請に協力的であれば、刑事罰や行政処分などが課されることはありません。
なお、刑事罰を前提とする「強制調査」は、よほど多額かつ悪質なケースでない限り実施されません。

相続税の税務調査は、亡くなった人が資産家だったため、多額の納税をしているので、更に申告漏れがないか確認を受けることが多いですが、そもそも相続税申告をしていない、提出した申告書に記載不備がある、税理士に依頼せず自力で税申告したなど、適正に処理をしていない可能性が高い案件についても調査がされるようです。

■税務調査で指摘を受けない方法は?

まず、税務調査するかどうかは管轄税務署の判断であり、確実に回避できる方法はないと考えるのが賢明です。こちらが出来るのは、正しい申告と納税を心がけ、万一調査された際に申告内容の根拠を提示できるよう準備しておくことです。
そのためにも、調査に耐えうる相続申告書を作成できる税理士を見つけることが重要です。

■税務調査で指摘されやすい内容は?

申告漏れを最も指摘されやすい財産は、現金・預貯金等です。
相続手続きにおいて、被相続人の名義の預貯金を申告から漏らすことはあまり現実的ではありませんので、税務調査で申告漏れを指摘された現金・預貯金等の大半は名義預金ではないかと推察されます。
名義預金とは、口座こそ親族名義であるものの、実質的には被相続人が管理処分権を握っていた預金の事で、相続税の課税時は“実質”が重視され、生前贈与や相続人の収入を原資に積み立てていたことを証明できない限り、相続税の課税対象になります。
よって、相続対策を行うのであれば、「相続人が実際の所有者になっているか」をしっかりと確認することが重要となります。

■万が一申告漏れがあった場合どうなるのか?

税務調査で万一申告漏れが見つかった場合には、漏れのあった課税額に「加算税(追徴課税)」と「延滞税」を上乗せして納税しなければなりません。加算税は未申告に対して、延滞税は未納税に対してそれぞれペナルティとして措置されます。
なお、加算税には、①無申告加算税、②過少申告加算税、③重加算税の3種類があり、申告漏れの状況に応じて決定されます。特に➂の重加算税は、意図的に財産を隠したり、虚偽の答弁をしたときに課されるため、課税される料率が高くなっています。

【表】相続税申告に漏れがあった場合の加算税一覧

申告漏れの内容 ペナルティの名称 加算税の割合※
税務調査の通知前に修正申告された場合 税務調査の通知後に修正申告or更正された場合
正当な理由なく、法定申告期限までに手続きしなかった ①無申告加算税 5% 15%
※50万円を超える部分は20%
申告手続きは行ったが、内容に漏れがあった ②過少申告加算税 対象外
(加算されない)
10%
※当初の課税額(最大50万円)を超える部分は15%
申告時に不正行為があった  重加算税  過少申告の場合:35%
無申告の場合:40%
納期限までに支払えなかった  延滞税  7.3%
※上記は年率、延滞日数が1日増えるたび日割りで加算される

※表記割合は全て「課税額全体のうち、申告漏れまたは無申告により未納になっている部分」に対するものです。

①無申告加算税・②過少申告加算税の2点については、税務調査の対象になる前に正しい申告を行うことで、表のように加算税の軽減があります。

万が一「すでに行った申告内容に誤りがあるかもしれない」「相続手続き後に多額の財産が見つかって基礎控除を超えるかもしれない」という事態に直面したときは、迷わず専門家に相談し、適切な手続きを速やかに行うことをおススメします。

日本クレアス税理士法人では、質の高いサービスをご提供する事で、相続問題にお悩みの方をワンストップでサポートいたします。是非お気軽にお問合せください。

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