2025.06.06 相続

贈与が成立していない?名義預金のポイント

相続の生前対策において贈与を活用することは、非常に有効であると言えます。
相続税は累進課税と言って、財産がたくさんあるとそれだけ相続税も多額になる仕組みになっています。
生前に財産をお子様やお孫さん、お世話になった方などに贈与をすることで、ご自身の相続財産を減少させたうえで、結果的には相続税を安く抑えることが出来ます。

しかし、生前対策で実行していた贈与が、将来税務調査が入った時に「名義預金」と判定されてしまったら、その贈与が無効になってしまう可能性があります。
相続対策において、「名義預金」の内容を理解しておくことは非常に重要です。

そこで今回は、名義預金の概要と、その対策についてご説明いたします。

■名義預金とは

まず名義預金とは、形式的には配偶者や子・孫などの名前の口座ですが、収入等から考えると実質的には別の所有者がいるという預金のことです。
つまり、相続の問題に当てはめると、単に名義を借りている被相続人の管理下にある預金を指します。

■名義預金の問題点

税務調査において、申告漏れ相続財産として指摘されるのは、現金・預貯金等で、その申告漏れを指摘された現金・預貯金等の大半を名義預金が占めると言われています。
つまり税務調査では名義預金に詳しく調査が入って、そこから追徴課税が発生しているのです。

相続対策を行うのであれば、「相続人が実際の所有者になっているか」をしっかりと確認することが重要となります。
税務調査では、被相続人と相続人や親族が保有している金融機関に対して照会を行い、預貯金の動きをチェックされます。
具体例を挙げると、被相続人が持っていた預貯金がある金融機関の支店に、被相続人の親族名義の預貯金を調査します。

また、その調査した預貯金で、内容が不明瞭な大きな金額の出金があると、その振込先の預金も調べることもあります。

■名義預金を判定するための5つのポイント

1.預金通帳・証書の保管を誰が行っているか?

預金通帳・証書の保管者が被相続人で、相続人がその預貯金の名義人であったとしても、その存在を相続人が相続開始まで知らなかった場合、その預貯金の真の所有者は被相続人と判断されます。

2.印鑑の保有者

印鑑は税務調査で厳しくチェックされるポイントです。
預金取引の開始の際、本人確認のために印影の届出を行うのが一般的ですが、贈与を行った者と同じ印鑑であれば、贈与者の名義預金として認定される可能性があります。

3.贈与税の申告の有無

贈与税の申告を行っていない場合、名義だけが相続人のものであり、実質は相続人の相続財産である「名義借り」として認定されてしまう可能性があります。

4.預貯金の管理運営者は誰か?

預金の引き出しや、定期預金の満期に伴う書き換えは、相続人が行うべきものなので、これらの手続きや運用を被相続人が行っていたとしたならば、名義預金として判断される可能性があります。

5.原資のチェック

一体どこからそのお金が振り込まれてきたのか、名義人の所得状況や資金源等、税務調査では諸条件を色々な角度からチェックされることになります。

■名義預金とみなされない対策

1.贈与の事実を残す

まず、贈与の事実があったことで、名義預金の疑いをなくすことが必須です。
つまり親から子などに、お金の贈与があったと証明できるように準備をしておくことです。

贈与は、贈与者が「あげる」といい、受増者が「ありがとう、もらいます」と言うなど、双方の合意が必要となります。 例えば、親が子ども名義で毎年預金をしていても、その預金の存在を子どもが知らない場合には、民法上贈与契約が成立していないことになります。
そのため、孫名義の預金が行われて10年経過したとしても、民法上、贈与が行われていないことになりますので、親の相続財産に含まれるということになります。

2.贈与が成立するポイントを把握する

贈与の事実を残すために、下記ポイントがクリアされているかチェックしましょう。

➀贈与契約書を交わす(贈与金額が110万円以下であっても)
➁贈与金額が110万円を超える場合は、贈与税の申告を毎年行う
➂預貯金の印鑑は、被相続人と違うものを使用すること
➃印鑑や通帳、キャッシュカードは、名義人が管理していること
➄口座の名義人がいつでも管理し、使えるようになっていること

日本クレアス税理士法人では、質の高いサービスをご提供する事で、相続問題にお悩みの方をワンストップでサポートいたします。是非お気軽にお問合せください。

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