遺言書と遺留分はどちらが優先される?
遺留分の対策
せっかく家族のために作った遺言書が遺留分を侵害しているせいで、余計な争いを生んでしまっては意味がありません。
そのためにも遺留分の基本的な内容や効果が及ぶ範囲をしっかりと押さえていただきたいと思います。
なるべく争いが起きないようにするためにも、遺言書を作成する場合には、様々なケースに対応できるように、信頼できる相続に強い弁護士や税理士などの専門家に相談することをおすすめいたします。
そこで今回は、遺留分の概要とその対策についてご説明いたします。
■遺留分とは?
遺留分とは、相続が発生した際、一定の相続人が最低限相続することができる財産の取り分の事を言います。
本来、相続財産は被相続人のものであるため、自分の財産をどの様に使ってしまってもいいはずですが、「自分が死んだら、全ての財産を見ず知らずの他人にあげる」という遺言が見つかると、残された家族には相続財産が一切手に入らないことになってしまいます。
相続人たちのその後の生活にも支障をきたす恐れがあるため、このような事態を避けるために、民法では、法定相続人が最低限相続できる財産の取り分を「遺留分」として保証しています。
自分の取り分である遺留分を侵害された場合には、「遺留分侵害額請求」という手続きを通して、初めて遺留分を主張することができます。
■遺留分が及ぶ範囲とは?
遺留分を請求できる権利があるのは、兄弟姉妹以外の法定相続人です。遺留分は、兄弟姉妹には認められず、妻や夫である配偶者、子供などの直系卑属、父母などの直系尊属に認められています。
遺留分は、直系尊属のみが相続人の場合は法定相続分の1/3、それ以外の場合は法定相続分の1/2が認められますので、相続する家族の構成によって、請求できる割合が変わってきます。
■遺言書と遺留分はどちらが優先される?
まず遺言書が見つかった場合には、原則的にはその遺言書が尊重されるという事を押さえる必要があります。
仮に遺留分が侵害されている場合でも、その遺留分を侵害されている人が、遺留分の侵害額請求の手続きをしなければ、その侵害されている部分の遺産を取り戻すことは出来ません。
そして、遺留分の侵害額請求には期限があるという事です。具体的には、相続の開始及び請求すべき贈与又は遺贈があったことを知ってから1年間で遺留分侵害額請求権は消滅します。これを「時効による消滅」と言います。
被相続人が亡くなって、自分の遺留分が侵害されて遺留分侵害額請求ができると知った時からとなりますが、その請求を実際にするには、被相続人が亡くなってから1年と考えておくことが、より確実です。
また、相続開始から10年が経過してしまうと、たとえ遺留分が侵害されているということを知らなくても遺留分侵害額請求権は消滅してしまいます。
■遺言書においてできる遺留分対策は?
それでは、遺留分の問題を未然に防ぐための3つのポイントをご紹介したいと思います。
1.遺留分の割合を把握する
上述した通り、まずは遺留分の割合をしっかり理解することが重要です。相続人の人数や関係性に応じて、遺留分として確保すべき金額は変動します。
それぞれの相続人にいくらの金額を残して、遺留分侵害額請求が生じないのか、きちんとシミュレーションをする事が重要です。
2.代償金相当額を残す
残すべき金額が把握出来たら、それを遺言書で表現をする事が必要です。
例えば、複数の預金口座と自宅が相続財産の場合に、全ての財産は一旦特定の相続人に渡すことにしても、遺留分に相当する金銭を、残りの相続人に残すと、遺言書に記載することです。そうすれば、例えば配偶者に全ての資産を渡したい(名義は配偶者のものになる)としても、遺留分に相当する金銭を残りの相続人に分配すれば、争いになることはありません。
誰か1人の相続人が財産を取得して、他の相続人には代償金を支払うことによって精算する遺産分割の方法を代償分割と呼びます。
3.保険の加入を検討する
遺言書に記載することは出来ませんが、代償金相当額を確保するために生命保険に加入しておくことも有効です。
いざ相続が発生した場合に、被相続人の預金口座が凍結してしまうと、遺産分割が確定しない間は口座から預金を引き出せないので、代償金として使用することが出来ません。
一方、生命保険は相続発生後数日で受取人の口座に直接振り込まれるため、代償金として利用が可能となります。また、生命保険は遺留分の対象にならないため、相続財産には含まれないといったメリットもあります。
また、死亡保障の保険金を受け取った場合、相続人×500万円までは相続税の非課税対象となり、相続税を圧縮する効果もあるため、生前に保険に加入しておくことは、相続税の節税対策にもなります。
日本クレアス税理士法人では、質の高いサービスをご提供する事で、相続問題にお悩みの方をワンストップでサポートいたします。是非お気軽にお問合せください。