ビットコインも課税の対象?特殊な相続財産について

国税庁が公表した令和5年度の「暗号資産(仮想通貨)等取引を⾏っている個人に対する調査状況」では、令和5事務年度においては、535件の実地調査を実施して、1件当たりの申告漏れ所得⾦額は2,356万円、申告漏れ所得⾦額の総額は126億円にも上ります。
ビットコインなどの仮想通貨は、比較的手軽に取引を開始できる一方で、利益が出て換金しても確定申告の手続きを失念している方も多く見受けられ、今後も税務調査によるチェックは厳しくなると思われます。
そして、暗号資産を保有したまま相続が発生すると、今度はその資産を相続財産に計上しなければいけません。
今回は、ビットコインなどの暗号資産の税務的な取り扱いと、相続財産に計上されるその他の財産についてご紹介いたします。
■所得税の課税方法/留意点
ビットコインなどの暗号資産を売却や交換をして利益が生じた場合には、原則として、雑所得に区分され確定申告が必要となります。所得金額は下記の算式で計算します。
『所得金額=売却金額-(譲渡原価+売買手数料)』
譲渡原価は、総平均法又は移動平均法のうちいずれか選択した方法によって計算をします。選択をしない場合には、個人においては総平均法、法人においては移動平均法で計算した金額となります。
複数の暗号資産を継続的に売買する方が、その譲渡原価の計算を行う場合には、非常に計算が複雑になるため、税理士などの専門家に相談するのがよろしいかと思います。
■相続税法における暗号資産の評価
暗号資産を相続で取得した場合には、相続税が課税されます。暗号資産については、決済法上、「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値」と規定されているため、被相続人から暗号資産を相続によって取得した場合には、相続税が課税されることになります。
暗号資産は、暗号資産交換業者が公表する課税時期における取引価格によって評価します。 暗号資産の評価方法については、評価通達に定めがないことから、評価通達5((評価方法の定めのない財産の評価))の定めに基づいて評価することとなります。
■見つからない場合のリスク
暗号資産はオンライン上での取引となるため、相続人がその存在を知らない場合には、相続財産の計上漏れによる追徴課税と、相続人が永久に手に入らないといったリスクが発生します。国内の口座を通じて取引をしている場合には、入出金の記録から取引をしていた事実は相続人も把握できますが、海外口座だけで取引をしていると、その存在すら知らないままになるかもしれません。
また、口座情報のIDやパスワードは相続人にも公表する方が少ないと思いますが、相続が発生した場合には、その存在を共有できるような管理方法が必要です。
■金銭不動産以外で相続財産になるもの
ビットコインなどの暗号資産も相続財産としてはやや特殊ですが、現金や不動産、株式以外でも相続財産に含まれるものの一例をご紹介します。
- 債権:貸付金・立替金
- 知的財産権:著作権・特許権・商標権
- 事業用財産:機械・農工具 など 事業用に使っていた財産
- 家庭用財産:貴金属・絵画・骨董品・自動車
- その他:ゴルフ会員権
またプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も相続税の対象となります。
下記マイナスの財産は、相続の計算においてはプラスの財産から控除されます。
- 借入金:車のローン・住宅ローン・クレジットの残債など
- 未払金:家賃・水道光熱費・携帯料金・未払いの医療費
- 公租公課:税金(所得税・消費税・住民税 など)・国民健康保険料
- 預かり金・敷金・保証金・買掛金 など
- 葬式費用
■相続財産のうち非課税となるもの
相続財産に含まれるものとは逆に、対象に含まれない「非課税財産」となるものもあり、その代表的なものをご紹介します。
- 死亡保険金
- 死亡退職金
- 祭祀財産
- 政国や地方or公益事業法人への寄付財産
1.死亡保険金
保険金の受給権は、血縁関係ではなく法律上の“契約”に基づいて発生します。この性質に基づき、保険会社との契約に基づいて給付される「死亡保険金」は、そもそも相続財産として扱わないのが民法でのルールです。
しかし税法では、死亡保険金を「みなし相続財産」として課税対象に含めます。これだけでは被保険者と受取人の利益を害するため、「500万円×法定相続人の人数」を限度に非課税枠が認められています。
2.死亡退職金
被相続人の勤務先から支払われる死亡退職金は「相続財産」として扱う一方で、死亡保険金と同様に「500万円×法定相続人の人数」を限度に非課税枠が認められています。
ここで言う“死亡退職金”には、生前の功労や社内のポジションに対して支払われる退職手当(役員弔慰金など)も含まれます。
3.祭祀財産
お弔いや日常の礼拝に欠かせない「墓地・墓石」「仏壇・仏具」「神棚」などの財産(祭祀財産)は、民法と税法の両方において相続財産とみなされません。したがって、骨董品としての特別な価値がないかぎり非課税とされます。
4.政国や地方or公益事業法人への寄付財産
相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月後)までに、政府・地方自治体・公益事業法人に寄付した財産は、評価額にかかわらず課税されません。
ただし、公益事業法人に寄付する場合は、実態として公益寄与が継続していることが前提です。
日本クレアス税理士法人では、質の高いサービスをご提供する事で、相続問題にお悩みの方をワンストップでサポートいたします。是非お気軽にお問合せください。