中村 亨の【ビジネスEYE】です。
セブン-イレブンの井阪社長は、2017年2月期の決算説明会において、『成長領域の日米コンビニ事業に圧倒的なパワーを持っていく』と語りました。2016年度の連結営業利益は3,645億円(前年同期比103.5%/+122億円)、6年連続で過去最高益を更新し絶好調です。
本日のビジネスEYEは、セブン-イレブンの『攻めの事業展開』についてです。
国内・海外のコンビニ事業における圧倒的な地位の確立へ
コンビニ事業で他を圧倒して独走態勢に入るため、井阪社長は『攻めの姿勢』を鮮明にし、以下の6つの施策を発表しました。
(1)チャージフィーを 1%減額
加盟店側からセブン本部に支払われる、チャージフィー(経営指導料・相談料)を、2017年9月より 1%減額の実施を決めました。1%ですが、加盟店にとっては年額80万円相当の負担減となるため、既存店成長や新規加盟促進の一助になると推測されます。
(2)店内調理機器の食洗器を導入
店内調理機器の食洗器を導入することで、作業時間の短縮(約1時間)、人件費の削減(年間約30万円)、水使用量の削減(1店舗あたり約20%減)と、作業効率の改善とコストカットが図れるほか、接客サービスの向上にも好影響が期待できそうです。
(3)ICチップの導入
商品を運ぶ専用カゴにICチップを添付することで、配送センターでの仕分け・積込み、車両から台車への荷下ろし、店舗での荷下ろしに加え、店舗での検品時間を大幅に省略することが可能となります。店舗でこれまで1日170分かかっていた検品作業が、わずか8分で完了。人件費削減効果は約80万円に相当します。
(4)店舗レイアウトの大幅な変更
鈴木敏文・前会長兼CEOの意向で、路面に雑誌コーナーを配置させることで、立ち読み客による賑わいを演出してきましが、時流(雑誌の売上高半減)に合わせる格好で、売上構成に見合った新レイアウトを導入します。具体的には、冷凍・チルド商品やイートインなどを拡大し、雑誌コーナーを大幅に縮小します。
(5)業界シェア50%を目指す
「業界内での再編が加速するなか、変化に対応し続けることで、更なる成長を目指す」とし、積極出店や商品力の強化(セブンカフェ)により早期の実現を目指すとしています。
(6)海外コンビニ事業 ~米国1万店舗を目指す~
今年4月、セブン&アイ・ホールディングスとして過去最大のM&Aを実施。米・中堅コンビニのスノコLP(テキサス)を3,650億円で買収しました。井阪社長曰く「米コンビニ事業は成長領域。十分に値打ちのある買い物」。米国法人を通じて8月をメドに、ニューヨーク、フロリダ、テキサスなどでスノコが運営する店舗の約8割を取得し、店名も順次切り替えるようです。
セブン&アイ・ホールディングスは、米コンビニ市場で出店数ベースで約5%のシェアを握る首位であり、今回の買収により店舗は約9,300店に増え、2位以下にさらに差をつけることになります。国内市場の伸びが鈍くなるなか、成長余地のある米国で早期に1万店体制を築くための布石と見られます。(参考:日本経済新聞 17.4.12「競合を一段と突き放し、セブンの6つの成長戦略」)
積極的な海外進出
鈴木敏文・前会長兼CEOの退任から約1年。
井阪社長は、加盟店の負担軽減となる施策を実施するとともに、ベトナムへの出店や沖縄県への出店を決定するなど、国内外へと積極攻勢をかけています。
現在の主要コンビニの海外店舗数は、以下の通りです。
セブン-イレブン
米国:8,454店舗、韓国:8,943店舗、台湾:5,161店舗。
世界17ヵ国で43,347店舗を展開(2017年7月現在)
ローソン
中国:1,003店舗、タイ:85店舗を展開。
東南アジアや中国を中心に1,156店舗を展開(2017年2月現在)
ファミリーマート
韓国:撤退決定
東南アジアや中国を中心に6,580店舗を展開(2017年7月現在)
コンビニ各社は国内市場の飽和を眺め、経済成長が期待される東南アジアや米国へと触手を伸ばしていますが、店舗数だけみてもセブン&アイ・ホールディングスの強さは抜きん出ています。国内・海外のコンビニ事業における圧倒的な地位の確立へ向け、これからも攻めの事業展開が続いていくでしょう。
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