経営メモ
計画は戦略にあらず
12月を迎えると、そろそろ来年度のことを考えはじめる、というのは個人も企業も同じようです。
書店や文房具店には2021年度の手帳が並び始めていますね。
公私ともに来年や来年度の計画を立てる時期です。今回の経営メモはこの「計画」について考えてみたいと思います。
トレンドは「バックキャスティング」
単年度ではなく、より足の長い中期経営計画(いわゆる中計)を作り、社内外で公表する企業も徐々にではありますが増えてきているようです。
この中計、最近ではバックキャスティングという考え方に基づき計画を作る手法が主流になってきているようです。これは、未来の「ありたい姿、あるべき姿」から「今現在」の課題を抽出していく方法で、要するに「逆算して必要なことは何か?」を考える思考法です(この逆、現在や過去のデータを元に未来を予測する方法は「フォアキャスティング」ですね。)
ただし、バックキャスティングであれ、フォアキャスティングであれ、ここで重要なのは、計画作りを命じられたものの(或いは命じたものの)、計画の前提である「ストーリー」、つまり事業の進むべき方向性が明確になっているかどうかです。
「戦略」なくして「計画」にあらず
本来、企業にとって必要なことは何かといえば、それは「戦略」があるかどうか?に尽きます。
他社と競争をする上では、少しでも優位に立てる「戦略」が求められるはずです。
計画となると、どうしても施策の羅列になってします。計画はあくまで戦略の下位概念です(戦略を遂行するためにいつだれが何をするか?が計画)
来年度の「計画」を立てる前に、その大前提である「戦略」の「再構築」が必要なのではないでしょうか。
少し逆説的ではありますが、コロナ禍で良くも悪くもビジネスの潮流が大きく変化している今であれば、(勇気のいることですが)逆に大胆な「戦略」が立てやすい時期でもあるといえます。
「選択と集中」か「多角化」か
大前提として「戦略」とは何をやって何を止めるかを決めることです。バブル崩壊後、特に日本の大企業の戦略は「選択と集中」の名のもとに不採算事業から撤退し、収益改善に努めるケースが目立っていました。しかし、中小企業に関して言うと、一つの事業だけで成長(少なくとも現状維持)できれば良いのですが、多少なりとも成長するためには、「多角化」が必要であると考えます。多角化とはつまり「収益のマルチチャネル化」であり、お財布をたくさん持つ、ということです。
多角化といっても、何も今からド新規の事業に手を出す必要はありません。
特に多角化している企業は新規事業に手を出しやすい体質があるため、新しいことに手を出す前に、「何を止めるか」を考えるべきです。
新しいことに手を出す場合には、無関連な多角化をするのではなく、「既存事業の隣地を攻めていく」という関連多角化戦略が常套手段でしょう。
シンプルで骨太なストーリー
さて、競争戦略・ブルーオーシャン戦略…世の中にはたくさんの「戦略」がありますし、書籍もあります。ただ私の経験で一番腑に落ちたのは「ストーリーとしての競争戦略(楠木建 著/東洋経済新報社)」でした。
結果的には「ストーリーが骨太でシンプルかどうか?が大事になる」(分かりやすく一言で言える・図解で示せる)ということを痛感した、特徴的な箇所を紹介します。
Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏が事業構想として最初に書いたとされる戦略です。ここでは、在庫だとか、レコメンデーションだとか、個別化マーケティングだとか、技術開発といった具体的なことは言及していません。
しかし、時間展開を視野に入れた因果論理になっていることははっきりと見てとれます。
しかもこれは紙ナプキンに書かれたということです。骨太でシンプルだからこそ、紙ナプキンでも表現ができる、その事実が非常に印象的です。
今年の年末年始は、企業も個人も、「戦略」に時間を割くのが中期的には競争優位に立てるのではないでしょうか。
会計事務所向けメディア「実務経営ニュース」において、インタビューが掲載されました。
6事務所の事業承継に成功した日本クレアス税理士法人グループ 中村 亨先生に訊く 事業承継成功の鍵は、異文化への敬意と絆
「実務経営ニュース」は、「日本の会計事務所、中小企業にとって本当に役立つことを。」をコンセプトに、株式会社実務経営が発行する月刊誌です。誌面では当グループの事業戦略、特に事業承継による組織の拡大と、事業の多角化について代表の中村が語っています。取材内容は実務経営Webサイトでもご覧いただけます。よろしければご覧ください。
会計事務所インタビュー:日本クレアス税理士法人|株式会社コーポレート・アドバイザーズ 中村 亨