中村 亨の【ビジネスEYE】です。
平成28年版厚生労働白書によると、日本の高齢化率は26.7%と世界トップです。他に類を見ない速度で高齢化が進む日本では、未婚・晩婚化による出生率の低下や、医療の進歩による延命が主因となっているようです。
こうした日本社会の構造的な課題に取り組むため、平成28年3月に、育児休業期間の延長等を盛り込んだ「改正育児・介護休業法」等の関連法が参院本会議で可決・成立しました。アベノミクス第二弾の「新・三本の矢」には、「介護離職ゼロ」を目指すとの表明が盛込まれましたが、どのように反映されたのでしょうか?
今回のメルマガでは、今年1月に施行された「改正育児・介護休業法」について、対策や仕組みづくりに役立つ最新情報をお届けします。
1月から変わった「介護休業」
従業員の「就業と介護の両立」をより柔軟に支援することができるような改正内容です。
介護休業の分割取得
改正前は、介護休業(93日)は、対象家族1人につき「常時介護を必要とする状態ごとに原則1回」とされていましたが、現在では3回を上限に分割取得できるようになります。
介護休暇の取得単位の柔軟化
介護休暇(年5日)の取得は、「1日」単位で取得しなければなりませんでしたが、今回の改正により取得単位が「半日」と柔軟化され、選択ができるようになりました。デイサービスのお迎えや病院への付き添いといったニーズに細かく対応することが可能となります。
ハラスメントの防止が義務化
今回の改正では、介護を理由とする従業員への不利益な取扱い(介護ハラスメント。通称「ケアハラ」)の防止措置が新たに義務付けられました。介護休業を取得しようとする従業員に対し、休業の拒否や復帰後に閑職へ追いやったり、心無い言葉をかけるような行為が発生した場合、法的責任を追及される恐れがあります。また同様に、妊娠・出産、育児休業を理由とするいわゆる「マタハラ」「パタハラ」等についてもハラスメントの防止が義務化されます。
その他にも下記のような改正があります。
・対象家族の範囲拡大(同居・扶養していない祖父母や兄弟姉妹等)
・介護のための所定外労働の制限(残業の免除)
・有期契約労働者の育児休業の取得要件の緩和
少子高齢化が進む中で、高齢者や女性等の就業促進と雇用継続をはかる措置が盛り込まれています。
育児休業が最長2年に延長
現行は原則1歳までで、保育所に入れない等の理由がある場合に限り1歳6か月まで延長が認められていますが、本改正によりさらに6か月(2歳まで)の延長が可能になります。また、それに合わせて育児休業給付の支給期間も延長となります(※こちらは平成29年10月1日施行)。
今後、育児・介護のために休業を希望する従業員が増えることが予想されます。改正法はすでに施行されていますので、介護・介護休業の運用体制がまだ整っていないという企業は、今すぐ就業規則や社内規程を見直しが必要です。
職場環境づくりも経営戦略のひとつ
少子高齢化に伴い、生産労働人口が減少傾向にあるなか、介護離職(家族らの介護を理由に退職せざるを得ない離職)は毎年約 10 万人発生しています。介護離職者が増加すれば人手不足に陥る等の懸念があることから、育児・介護と仕事を両立できる体制づくりは、今後さらに必要となるでしょう。
平成29年3月の有効求人倍率は1.45倍(東京都は2.06倍)と、企業は非常に厳しい採用環境に置かれています。働きやすい環境の構築も経営戦略の一部です。こうした制度の仕組みを社内に整えることで、良い人材獲得はもちろん、社員のモチベーション維持にも役立つでしょう。
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