コーポレート・アドバイザーズがお届けする「中村 亨の【ビジネスEYE】」です。
『 米ナイキ、ゴルフ用具撤退 ウエア・シューズは継続 』 (日本経済新聞 電子版 / 2016年8月4日)
2016年のリオオリンピックで、112年ぶりに正式種目として復活したゴルフ。人気復活への起爆剤と盛り上がりをみせる一方、それを下支えるゴルフ用具業界は厳しい環境が続いているようです。今年5月、アディタスが傘下にあるゴルフ事業部門のブランド「テーラーメイド」等の売却意向を表明しました。そして今回、米ナイキがゴルフ用具からの撤退を表明しました。相次ぐ大手企業の撤退により、同業界は否応なしに変革期へと突入することになります。本日のビジネスEYEでは、「原点回帰」について考えてみます。
ゴルフ業界の現状
世界最大のゴルフ大国といわれる米国でも、ゴルフ人口の減少は顕著になっています。2000年頃には3,000万人いたとされるゴルフ人口は、ここ最近では2,600万人程度まで減少。このような傾向は世界中で散見されています。
主要スポーツメーカーゴルフ部門の実績
アディダス・・・2015年第2四半期のテーラーメイド事業の売上高は、前年同期比で26%減少。グループ全体の売上が5%伸びる中で、粗利は0.9ポイント低下し48.3%。
ナイキ・・・2016年5月期のナイキゴルフ事業の売上高は8.2%減の7億600万ドル(約710億円)。3年連続で売上減少。
売上減・需要減を主な理由として、ゴルフ用品事業からの撤退を表明しましたわけですが、ゴルフ業界から完全に撤退するわけではありません。両社ともウェアやシューズといったアパレル事業は継続する意向です。つまり、飽和状態にある同業界での苛烈なシェア争いを避け、原点回帰とも言えるアパレル事業へ集中することに活路を見出したのです。本業となる軸があるからこその「選択と集中」といえます。
若年層を取り込むための次の一手とは
業界全体としては、オリンピックを追い風として若年層の取り込みが急務となります。若年層がゴルフに対して抱くネガティブな固定概念(コストがかかる、時間がかかる等)を取り除き、気軽に参加できる環境を作ることが求められます。
企業としては、原点回帰することで自社の強みを再確認し、経営戦略を練り直すことが求められます。同業の撤退でライバルが減ったと安心している時間はありません。飽和状態にある同業界だからこそ、経営者は常に多角化を意識しておくことが肝要となります。
次のようなビジネスフレームワークを活用すると、正確な現状把握と経営戦略の再考に役立ちます。
「バリューチェーン分析」
事業活動を機能ごとに分類し、どの部分(機能)で付加価値が生み出されているか、競合と比較してどの部分に強み・弱みがあるかを分析し、事業戦略の有効性や改善の方向を探る手法。
「ファイブ・フォース分析」
業界の収益性を決める5つの競争要因から、業界の構造分析をおこなう手法。
「アンゾフの成長マトリックス」
市場と製品もしくはサービスをそれぞれの軸にとり、それぞれ「新規」か「既存」のいずれかを狙うことによって、4つの象限に戦略を分類する手法。
企業経営における「原点回帰」というと難しく感じますが、「原点」を「企業理念」と置き換えてみてはどうでしょうか。想いを形にするのが企業です。その基礎となる企業理念に立ち戻ることは、現状打破・更なる成長への気付きの一助となるかもしれません。
日本クレアス税理士法人|日本クレアス税理士法人│コーポレート・アドバイザーズでは、会計の専門家の視点から、経営者の次の智慧となるような『ヒント』をご提供しています。