2000年から2016年までの間、日本の上場企業でもっとも売上を増やした会社はどこでしょうか?
ズバリ、それはトヨタです。2016年度は27.5兆円の売上を計上し、2000年度比2.1倍で14.6兆円の増収となりました。
この要因としては、いくつか考えられます。
まず一つは、「グローバル化」に伴う、積極的な海外展開です。2001年3月期に7兆円だったトヨタの海外売上高は、2017年3月期には、約20兆円とほぼ3倍に急伸しています。
値上げによる売り上げ向上のキーワード
もう一つ、見逃せないのが「価格の引き上げ」です。1台あたりの売上高が、この16年間でなんと4割も伸びています。この「価格の引き上げ」は、高級ブランド「レクサス」が浸透したこと、また、環境・安全性能の強化に伴って全車種の価格が底上げされたことに起因します。
1)環境
例えば、トヨタのエコカー「プリウス」。プリウスは、Sグレードに限定しても、1997年に215万円(税抜き)でしたが、2005年には220万円、2015年には229.5万円と、一部改良も含めたモデルチェンジを機に、じわりじわりと価格を上げてきましたが任期は衰えていません。性能を高めることで付加価値を加え、価格に反映させてきました。
2)高級感
また、冒頭のレクサスと同様、JRグループでは、豪華列車「ななつ星(JR九州)」も好調に推移していますし、「トワイライト瑞風(JR西日本)」や「トランスイート四季島(JR東日本)」等、非日常の体験を提供する列車が人気を集めています。脱デフレのカギは、「環境」と「高級感」といえるかもしれません。
3)健康
さらに、生活に密着した小売に目を向けてみますと、値下げが大半を占めるなか、値上げに成功した商品は下記のようになります。
・明 治 「R-1ヨーグルト(112g)」 46円 → 121円
・花 王 「ヘルシア緑茶(500ml)」 107円 → 177円
・ライオン 「クリニカ キッズハブラシ」 139円 → 189円
・フマキラー「フマキラープレミアム(550ml)」 708円 → 1,039円
「環境」・「高級感」に加え、「健康」もキーワードの一つとなっているのが分かります。
前月号で「ヤマト運輸のアマゾンへの値上げ交渉」の件を書きました。ヤマトの再配達便にみられる「おもてなし」は、なかなかBtoBという枠組みもあって「価格転嫁」できていないのだと思われます。
「3K」(環境・高級感・健康)に加え、人手不足による値上げが理解される時代が来るのか?
それとも、ロボットやAIの時代で人で不足が解消される時代が来るのか?
中小企業の経営者の心眼が試される時代が来ているようです。
【参考:『日経ヴェリタス / 2017年5月28日号』】