前回に引き続き、実践編です。今回は実践の基本の流れの後半を説明していきます。
1.前提 全社的コンセンサスの形成と課題把握
2.検討 実践テーマの決定
3.推進 決定したテーマに沿ったToDoの実践
4.記録 自社評価及び自社アピール
上記の「推進」「記録」の部分ですね。”実行段階”のポイント解説となります。
3.推進 決定したテーマに沿ったToDoの実践
主なToDoとしては3つ挙げることができます。
(1)担当者決めとその業務範囲の明確化
(2)サプライチェーンの全体像把握と「今できること」の実践
(3)「働き方の多様化」の実現
業務として進めていくにあたっては、マネジメントする人間が必要です。
重要なことは、業務範囲と権限を明示しておくこと。
取り組みが形骸化することがないよう、まずここをしっかりと固めておく必要があります。
またSDGsの実践においては、自社だけの問題にとどまらず関連する顧客や取引先へも影響してきます。
可能な範囲で、自社のサプライチェーンで起きうるESG問題を把握しましょう。
さらに、在宅勤務やワーケーションなど従業員が生産性を高めやすい勤務場所を選択できるようにすることは、従業員の働きやすさに直結するだけでなく、自社の交通費削減、はたまた通勤時のCO2削減にもつながり、結果としてSDGsの実践となります。
4.記録 自社評価及び自社アピール
企業でのSDGsの実践は業務ですから、そのプロセスや結果は適切に管理されなければなりません。
したがって記録の作成が必要です。
「言われなくても分かっています!」という方もいらっしゃるとは思うのですが、参考まで、記録方法や項目についてポイントを整理しておきます。
・取り組みを5W1Hで記録している
・業務日報などの既存の書式に簡単に追加できる
・取り組み結果を可能な限り数値化して記録している
・取り組み結果から読み取れる事柄を分析し記録している
・関与したステークホルダーを記録している
また、記録しっぱなしではなく、取り組みの有効性を評価することも必要です。
・ESG問題の解決にかかったコストを取り組みテーマごと集計して評価する
・ESG問題の解決から得た利益または削減できたコストを取り組みテーマごとに集計して評価する
「記録」も「評価」も企業にとっては「資産」です。SDGsの登場によって顧客は取引先の社会性を、消費者は消費行動の社会性を重視するようになってきました。学生の企業選びの基準も変化してくると推察され、企業にはワークライフバランスや仕事の社会的意義、人間的な成長の機会などが求められてきています。
SDGsの実践は彼らのニーズに応えることができます。だからこそ記録をとり、それを「見せる化」して、ニーズに応えることができるという事実を対外的に表現し、積極的に発信していくことが大切です。
次号ではSDGsの取り組みにおける「リスクヘッジ」についてお伝えしていきます。引き続きお付き合いください。
※今回の経営メモは「会計士 中村亨の『経営の羅針盤』」第25回の内容を抜粋したものです。
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