今年、2018年は中小企業の経営者にとってどんな年になるのでしょうか?
様々な課題が思い浮かびますが、人手不足がピークになる年ではないかと思っています。
ではどうすればいいのでしょうか?
ズバリ、「生産性」と「価値」ということになるでしょう。
1.「働き方改革」は「生産性向上」が本来の目的
まず、働き方改革。改革に着手しないと、今後は採用面でも苦戦が予想されますし、また、残業が減らずに優秀な人材や将来ある若手が退職してしまう懸念があります。「働き方」の見直しは浸透してきましたが、まだまだそれが目的化してしまっている傾向もあるようです。
「残業減少 → 給料減少(残業代の減少)」・「残業減少 → 売上減少」
残業は減ったものの、売上が減少してしまう、或いは、従業員の給料が減少してしまう。会社にとっても従業員にとっても、生産性を向上させたことにならず、元も子もありません。
「残業減少 → 給料増加」・「残業減少 → 売上増加」
生産性が向上して残業が減ると同時に、売上が増え、高い給与につながる。目指すべきはこちらのモデルです。残業減少は手段、生産性向上が目的というのが本来のあるべき姿です。
経営者は頭を切り替えて、「業績を伸ばすために残業を減らし生産性をあげなければならない!」と、やっと行動し始めたところではないでしょうか?
2.中小企業の事例
ここに、働き方改革を実施(生産性向上)し、収益・利益増加(価値向上)につなげた一つの事例を紹介します。
神奈川県の鶴巻温泉、老舗旅館「陣屋」です。
陣屋は思い切った改革を行い、無休営業から「定休日」に切り替えました。また、平均単価を上げることに成功し、社員の平均年収を4割増やしたそうです。
◎平均単価を上げる
オーナーの宮崎富夫氏が経営を引き継いだ2009年、稼働率は40%台だったそうです。団体客向けに宿泊料を低めの9,800円に設定するなどしたものの、利益は出ません。宮崎氏は、平均単価を上げることを目標に、14年2月から毎週火・水曜日を休館とすることを決断しました。さらに、16年1月からは月曜日も加えたそうです。
◎働き方を大胆に見直す
一方で、正社員を20名から25名に増やし、休館日の半日を研修や会議に充て、接客力向上に務めました。その結果、平均客単価は4万5,000円にまで上昇した上、稼働率も80%に高まったそうです。改革が功を奏し、社員の平均年収は288万円から398万円と4割増えました。
製造業に比べ非製造業の生産性は伸び悩んでいるのが現状です。日本生産性本部によると、1995~2015年の実質労働生産性(就業者1時間当たり)は、製造業で74%増えた一方、非製造業では、運輸・郵便業が9%減、宿泊・飲食サービス業が5%減など、それぞれ落ち込んでいます。非製造業は国内総生産(GDP)の約75%を占めますので、サービス産業の生産性の底上げがGDP拡大にも不可欠です。(参考:日本経済新聞 2017年11月28日号)
それ以外に私が思いつく生産性向上手段は以下の通りです。
- ●パソコンのモニターを1人2台にする
- ●パソコンを新品に切り替える
- ●IT投資、各種ツールを積極的に導入する
- ●会議を短くする(特に社長の独演会は禁止)
- ●社内会議は立ったままやる
- ●ペーパーレス化する
- ●フリーアドレスにしてオフィス面積を縮小する
- ●社内の業務フローを見直す
他にもたくさんあると思いますが、「本気」でやることが大切です。当社ではまだ道半ばですが……。
3.大企業の事例
もう一つは、大企業の事例です。やはり、「価値」と「価格」を引上げることで、量を無理に追わずに利益を確保することがポイントになるでしょう。それを示唆するデータがあります。
2001~2016年度の上場企業の増収額ランキングを見てみると、首位に立ったのはトヨタ自動車です。トヨタ自動車は、自動車の価格引き上げに成功し、1台あたり売上高は約4割伸びたそうです。高級ブランド「レクサス」が浸透するなど、環境や安全性能の強化に伴って価格が上昇しました。
もちろん売上拡大の背景には、積極的な海外展開が大きく貢献していることも見逃せません。グローバル化を見据え、海外の生産拠点を約3割増やし、海外売上高を約3倍にしました。或いは円安の関係かもしれません。しかし、トヨタは高級車レクサス以外にもハイブリット車であるプリウスをこまめに値上げする(アングル17年8月号経営メモ参照)など、価格政策つまり価値追求には余念がないようです。
トヨタは量も増えているがそれだけではない、ということに注目すべきです。中小企業であればあるほど人手不足が前提の時代、数(量)ではなく質(価値)、つまり利益確保の手段を考えなければ消耗戦となってしまいます。
4.その他
働き方改革を中心とした生産性の向上、そして価値の向上。今年は、アベノミクス開始から6年目に入りました、いよいよ、経営者の「本気度」が試される年になるのではないでしょうか?
もう一つ、3つ目のキーワードを上げるとすれば……? それはやはりM&Aだと思います。成功確率が低いといわれるM&Aですが、この確率をあげることは「経営」の生産性の向上であり、価値の向上であるともいえますね。