生え抜き社員と外部人材を入れ替えることで業績を回復させている企業が増え始めています。
日本でも米国並みにキーマンの流動性を高める動きが目立ってきています。生え抜き社員だけでは時代に適応できないのでしょうか。
名門復活のカギは人材の流動化
コンピューターメーカーの“ヒューレット・パッカード”。2006年に米IBMを売上高で抜き、「世界一のIT企業」となった名門企業です。しかし、PC事業が失速し、2012年には約1兆円もの最終赤字を計上する事態に陥ってしまいましたが、現在、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(2015年設立)として、急速に復活しつつあります。
復活のために大がかりな組織再編の陣頭指揮をとったホイットマン前CEO(2018年2月退任)は、徹底した非戦略事業の切り離しを行い、世界で約30万人いた従業員を約6万人(2018年))にまで減らしました。また、戦略事業においては、社内キーマンの入れ替えを目的に、企業買収で外部人材を取り入れ、戦略事業部や開発部門のトップ、現場の指揮官など組織の要となるポジションに配置したそうです。これにより、改革のうねりを大きくしていったようです。
外部人材が重要なポジションに
外部人材の登用は、日本企業でも行われるようになってきています。缶コーヒーでおなじみの“ダイドードリンコ”も外部人材を登用して業績を立て直した1社です。
人口減少が進む日本では、缶コーヒー市場も縮小しています。厳しい環境のなかで企業として成長を続けるには、市場を喚起する新商品やプロモーションが今以上に重要となります。そうした役割を担う「マーケティング部」の発足にあたり、ダイドードリンコはP&Gジャパンから部門長を招聘し、さらにスタッフも外部人材中心に編成したそうです。すると、缶コーヒー「世界一のバリスタ」シリーズ(2013年発売)が大ヒットし、累計約10億本の販売数となりました。今や看板ブランドへと成長しています。
生え抜きだけでは不安
外部人材の登用が進めれば、社内がギクシャクするかもしれません。有能なプロパー社員が退職してしまう可能性や、社内の軋轢によっては外部人材が実力を発揮できないといった事態も想定できるでしょう。こうしたリスクを考えると、多少事業スピードが落ちても生え抜き社員を再教育する選択肢もあっていいはずです。しかし、少なからぬ企業が「キーマンほど生え抜きより外様」にかじを切り始めているようです。
(参考:日経ビジネス2018.2.9「社員の賞味期限」)