会計事務所を経営しているとどうしても部下に、「マルチタスク」をスピーディーにこなしてほしい、という願望が出てしまいます。ここでいうマルチタスクは、複数のクライアントを同時並行で処理する、ということになります。実際に1人当たりの担当件数は多いのが現状です。
あるとき、やや衝撃的なタイトルの本が目に入ってきました。
『 SINGLE TASK 一点集中術 「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる/デボラ・ザック (著)、栗木 さつき (翻訳) 』です。マルチタスクの中にもシングルタスク的要素を取り入れる、という意味も込めてあえてこの本のエッセンスを紹介したいと思います。
成果が出ないのは「マルチタスク」が要因?
「1日必死に働いたのに、何もできていない」「時間はどこに消えてしまったのだろう」と、途方に暮れる経験は恐らく誰にでもあるでしょう。ずっとせわしなく働いていたのに達成感がないのは、どうしてなのでしょうか。
本書では、仕事の進め方や対人関係において、複数の作業を同時に処理する「マルチタスク」が要因であると指摘しています。マルチタスクでは、記憶が定着しにくく、能率が落ちるデメリットがあるそうです。
著者であるデボラ・ザック氏は、「1つの作業」のみに没頭する「シングルタスク」を提案しています。「同時進行」をやめるだけで成果が上がるので、全行動を「1つずつ」にすると良いと説いています。
シングルタスクの原則
一度に1つの作業に集中して生産性を上げる
頭のなかの余分な雑念に邪魔をさせない / 外からの刺激をシャットアウトする。
マルチタスクに陥らないためには、例えば、スマホやPCのメールチェックの時間を1日3回と決め、集中して返信するなど、時間の使い方に配慮することが大切となります。仕事の切り替えを少なくし、集中力を保つための自律的な工夫を積み重ねることが、「今」に集中できる基礎となります。
<抜粋>「シングルタスク度」自己評価表
1.会議やミーティングの最中に、メッセージを返信することがありますか?
2.歩きながら、携帯電話などのデバイスをいじりますか?
3.紹介されたばかりの人の名前を、すぐに思い出せなくなることがありますか?
4.仕事関係の連絡がきたら、たとえ時間外であろうと、すぐに返信しなくてはいけない気がしますか?
5.忙しく過ごしているにも関わらず、充足感を覚えられず、能率が上がらないことがありますか?
上記の自己評価表で、ご自身のシングルタスク度が推測できたでしょうか?(本来は20項目あります)
実際の仕事となると、顧客からの電話や、ミーティング、部下からの質問など、マルチタスクにならざるを得ない場面もあるでしょう。とはいえ、仕事における生産性の向上を図るためには、一度に1つの作業に集中することが大切でしょう。「シングルタスク」の重要性について繰り返し伝えたいと思います。