【経営メモ】

日本企業は、事業の「選択と集中」を以前よりも加速させています。不採算事業を抱える多角化経営に対し、株主の視線が厳しくなっていることが主な要因とみられます。特徴としては、かつて主力だった事業から思い切って撤退する事例が多いことでしょう。

[2018年の主な企業の事業撤退]

東芝    : 6月|パソコン事業     /シャープに50億円で売却予定
シダックス : 5月|レストランカラオケ事業/同業を営むB&V社に売却
カシオ計算機: 5月|コンパクトデジカメ事業/ノウハウを新事業の創造にあてる
富士通   : 1月|携帯電話事業     /ファンドに売却

2004年、“コンピュータ界の巨人”IBMは、パソコン事業を中国最大手のパソコンメーカーであるレノボグループに17億5,000万ドルで売却しました。その後、IBMは売却で得た資金を人口知能分野に投資し「Watson(ワトソン)」の開発を進め、現在も人口知能・情報システムのトップ企業として君臨しています。IBMは、パソコン事業の競争激化(コモディティ化)を予想し、いち早く事業撤退を決断したのでしょう。
日本のパソコン事業もかつては躍進していましたが、NECや富士通もIBM同様、レノボグループへ経営統合を行っています。今回、東芝もパソコン事業を売却しましたので、その流れに加わりました。
これまで一般的に、日本企業は事業撤退の決断が遅いと言われてきましたが、それには下記のような日米企業観の違いが背景にあります。

[ 2つの企業観 ]

企業用具説(アメリカ)

企業の存在理由      :株主が富を増すための手段である
企業の存続についての考え方:価値を生み出す能力のない企業は撤退すべきである
戦 略          :リスクを負っても利益率を高める戦略

企業制度説(日本)

企業の存在理由      :それ自体として存続する意味がある社会的制度である
企業の存続についての考え方:企業を存続させる責任を経営者はもっている
戦 略          :経営の安定化を重視する戦略

 

日本の経営者には「企業制度説」の企業観があるため、存続を重視します。一方、アメリカの経営者は、「企業用具説」の考え方ですので、企業は投資家が利益を得るための用具に過ぎず、その価値がなくなれば市場から撤退した方がよいと考えています。
傾きかけた経営を立て直す努力はムダであり、新しく企業をゼロからつくることや良い企業をさらに伸ばすことに使われるべきと考えられています。

日本でも株主への説明責任が求められるようになり、低収益事業からの撤退に迷いがなくなってきているようです。今後も不採算事業の撤退や売却、それに伴うM&A(合併・買収)も増える可能性があるでしょう。アメリカ流の企業観が日本にも広がり、以前よりもスピード重視で、事業撤退の見極めが行われています