IT投資が、経営にとって必要不可欠の時代となっているようです。
事業運営の効率化や潜在需要を喚起するサービスの開発・提供が、ITの活用によって可能となるようです。以下は、JAL(日本航空)の事例となります。
◇新システムがもたらす絶大な効果
一般的に航空会社の収益は原油動向に左右されやすく、最近の原油高はJALの業績にマイナスに作用します。しかし、昨年11月に旅客システムを刷新したことで収益改善効果がみられ、2019年3月期業績が増益に転じるかもしれないところまで数値が改善しているそうです。
新システムの効果は絶大で、国際線の有償座席利用率は80%を超え、また客単価も上昇したそうです。2018年4月~6月期決算をみると、国際線の輸送能力は前年同期にくらべ7%増強する一方、座席利用数はそれを上回る9%の増加となりました。
◇価格設定が収益向上に貢献
新システムは、予約状況などに応じてチケットの価格設定を変える「レベニューマネジメント」をAIに担わせたことがポイントです。旧システムでは社員の長年の経験に頼る面が大きかったそうです。
レベニューマネジメントとは、在庫の繰り越しができないビジネスにおいて、需要を予測して売上高の最大化を目ざした販売の管理方法です。例えば、航空券のチケット買う時、3ヵ月先のチケットは安い値段で買えるものの、フライト直前の場合は値段が倍以上に跳ね上がったりします。こうして、需要を予測した価格の設定が行われており、航空会社の収益の向上にとても重要な要素となります。
新システムにおいてAIは、過去のチケットの売れ具合などをもとに、需要を予測し最適な価格を算出します。需要を読み間違えて収入をロスすることが減ったことで、収益の改善に貢献しました。
さらにAIの強みは、データを蓄積していくことで精度が増していくという点にあります。長く使えば使うほど、システムの性能が上がり収益への寄与が期待できるのです。飛躍の原動力になるかもしれません。(参考:日本経済新聞/2018年9月1日)
◇IT投資が決め手
単なるIT投資というよりも、どうやらAI投資といったほうが適切なのかもしれません。
JALのここ数年営業常利益は約1,600億円。新システムへの投資は800億円ということですから、これくらいの大胆な投資をしなければ目に見える成果は出ないのでしょう。
JALは、2002年にJAS(日本エアシステム)との経営統合、2010年に経営破綻が起こり、やっとIT投資が可能な経営環境になりました。
中小企業にとっては、「営業利益の半分をIT投資に回す」という意思決定が可能なステイブルな経営状態を作り出すことこそが、大胆なIT投資決断の必要条件なのかもしれません。