2018.11.01

経営メモ「危機意識とM&A(「買った会社が悪かった」では済まされない)」(Vol.65)


リコーM&A戦略の誤算

今から10年前の2008年。
リーマンショックのあった年のことです。

世界2位の事務機器メーカーであったリコーは、2007年度(2兆2,199億円)まで14年連続増収を達成し、「営業力のリコー」「野武士集団」と呼ばれていました。ライバルであるキヤノンを意識し、世界シェア拡大へ販売会社の買収合戦を繰り広げていました。

そして2008年、リコーは過去最大の買収をすることになります。事務機販売大手のアイコンオフィスソリューションズ(現リコーUSA、ペンシルベニア州)を約1,700億円で買収し、アイコン社が米欧で展開する400以上の販売・サービス拠点を手に入れたのです。首位キヤノン追撃の切り札と位置付けたのでしょう。アイコン社の販売はキヤノン製が6割であり、これをすべてリコー製に置き換えられるからです。ライバルに一泡吹かせてやろうと思っていたのかもしれません。

しかし、結果的にこれは誤算でした。

先進国を中心にオフィスのペーパーレス化が進展するのに伴い、市場の縮小傾向が加速し、リコーの業績にも急ブレーキがかかることとなりました。さらに、リーマンショックも追い打ちをかけました。

リコーとキヤノンの差は「危機意識」

リコーは18年3月期にアイコン社で1,400億円を減損処理し、連結営業損益が1,600億円の赤字になる見通しです。キヤノンは18年12月期に4,200億円の黒字を予想しています。「買った会社が悪かった」では済みません。両社の差は何でしょうか。「危機意識」でしょう。

10年前はすでに北米事務機需要は伸び悩んでおり、リコーはそれをシェア拡大で補おうとしました。
一方、キヤノン会長の御手洗冨士夫氏は「事務機、デジカメはもう伸びないと思って10年前から新しい柱を探し続けてきた」と言います。医療や監視カメラが新たな収益の柱となった体制は、低収益でも事務機に依存するしかないリコーと安定感が違います。
(参考:日経ビジネス2018.4.9)

 

以下、財務データをあげておきます。

「キヤノン」(単位:十億円)
■2009年12月期売上:3,209 / 売上に占める「オフィス関係」の割合:50%
■2017年12月期売上:4,080 / 売上に占める「オフィス関係」の割合:45%

「リコー」(単位:十億円)
■2009年3月期売上:2,091 / 売上に占める「オフィス関係」の割合:87%
■2018年3月期売上:2,063 / 売上に占める「オフィス関係」の割合:77%

「ビジネスと恋に陥ってはいけない」とはよく言ったもので、近視眼的になりすぎて競合だけが目に入ってしまうとマーケットを見失うのかもしれません。

 

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