経営メモ「老後2000万円不足 問題」(Vol.71)


世間を騒がせている「老後2000万円不足」問題を取り上げてみます。

まずモデルの根拠を見てみると、高齢者夫婦無職世帯(高齢者というのは男性65歳以上、女性60歳以上)の平均的月額の支出が26.4万円であるのに対し、収入の平均値は公的年金の受給額の平均値である19万円を含めて約20.9万円となる。
この差額約 5 万円の月額赤字を 30 年間続けるには約 2000 万円不足する、というものです。

 

このモデルの問題点は皆様もお気づきだと思いますが、いくつか考えられます。

□ 年金の収入は千差万別であり、「平均値」には意味がないし、実態を捉えるべきであるならば「中央値」を活用すべきであった。(また年金の種類自体も厚生年金、国民年金、企業年金等複数存在する)

□ 総務省の調査によれば、高齢者夫婦無職世帯の平均貯蓄残高は2292万円あり(中央値は1437万円)、「老後に2000万円赤字が出るが、貯蓄はそれ以上にある」とレポートすべきだったはず。

 

金融庁の意図は何か?

一般に言われているのは「強烈な不安や危機感を惹起し、資産運用を進めることで株式市場へのお金の 流れを増やそうとしている」ということです。真偽のほどはわかりませんが、十分に考えられることです。

 

一方で個人・企業人を取り巻く環境を見てみましょう。

年金以外の老後の生活の最後の砦になる「退職金」に大きな変化が見られます。手元の資料によれば、大卒、大学院卒の平均勤続 35 年以上を対象とする退職金の平均支給額が、1998年の3200万円が、2018年には1997万円と大きく減少しています。

これは勤続35年以上ということですから、おそらく大企業の退職金が大半を占めていると思われますので、すべての人が受け取る平均的な退職金ということになれば、もっと少ない数値が出るはずでしょう。いずれにせよ、退職金はあまねくセーフティネットになるということは考えられず、いわば老後資金は国も企業も十分な手当ができない可能性が増大し、「自己責任化」の方向に向かっているわけです。

では、どうすればよいのか?

絶対的な回答は、難しいですが一番重要なのは、まず健康でしょう。
65 歳といわれている現在のリタイア年齢は、人生100年時代を前提にすれば、70歳にすることが可能だと思われます。もっとわかりやすく言えば 70 歳までは健康で働く。これが不安を払しょくする必要条件だと思います。

65 歳で定年退職して、一時金で退職金をもらうよりも健康で 70 歳まで働く方が、社会とのつながりも長く持てるし、その方がいい、と考える人が増えてくると思います。

(もちろん 70 歳まで働いてさらに退職金ももらえるに越したことはありません。むしろ企業経営者はそのつもりで、つまり 70 歳まで雇用してさらに退職金を払える会社づくりをすべきだとも言えます)

参考:週刊東洋経済7/13号、週間ダイアモンド7/23号

 
 
 

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