経営メモ「ビジネスモデル崩壊?」(Vol.51)


EC業界(インターネット通販等)の隆盛の影響で、それを支える宅配事業者が苦しんでいるようです。

日経ビジネスでは「ヤマトの誤算」(平成29年5月29日号)、東洋経済では「物流が壊れる」(平成29年3月4日号)というセンセーショナルな特集が組まれました。また、紙面では「ヤマト、アマゾンに値上げ要求」という見出しも踊りました。

以下の決算数値をご覧ください。

これは宅配事業を主力とするヤマトホールディングスの財務数値です。

売上は着実に伸びているのに、経常利益はほぼ横内状態。「豊作貧乏」という表現がぴったりのPLです。

さて、もう一つ。佐川急便を中核とするSGホールディングスの財務数値もみておきましょう。

ヤマトと違い、経常利益が確実に伸びています。アマゾンとの配送契約を打ち切ったことが主因でしょう。

 

少し遡りますと、ヤマトがアマゾンとの取引を始めたのは平成25年春頃とされています。それ以前は、アマゾンは佐川急便と配送契約を結んでいました。しかし、佐川急便の主力はBtoB。推測ですが「アマゾンから大口割引を要求され、儲けが出ない」と判断して契約を打ち切ったのでしょう。この後釜としてヤマトが引き受けたようです。

現状のヤマトはどうでしょうか。
①現場が疲弊しており、業務が追いつかない
②人手不足から、人件費が高騰し、利益が出ない

 

ここで皆さんと一緒に考えてみたいのですが、なぜ現場の窮状をもっと早く受け止め、値上げを要求しなかったのか?ということになると思います。要因としては、下記の①~③が考えられるでしょう。

①アマゾンの取引量拡大を甘く見ていた(見誤った)
②現場の窮状はよくあることで乗り切れると判断していた
③利益よりシェアの拡大に主眼を置いていた(アマゾンとの取引を始めた動機もここにあるのでしょうか?

両社の利益の伸びの差がすべてアマゾンとの取引に起因するとは言いきれませんが、経営者の一つの判断が、大きく会社の趨勢をきめるという良い事例であり、考えさせられます。

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