ここ数十年の間に、IT技術の進展やイノベーションにより、魅力的な商品やサービスが生み出され、Microsoft、Apple、Google等、巨大企業がシリコンバレーから誕生しています。
そのシリコンバレーを3月に訪れ、大いに刺激を受けました。アメリカには、起業家の失敗を許す風土があり、また、大きな事業であれば初期投資は当然かかるとの認識があるようです。こうしたことから、経営者に求められるものが、大きく変わったと感じました。つまり、21世紀型の経営者は、ゼロから事業・市場を開拓する「イノベーションの気概」「変化の柔軟性」が求められているのです。
もちろん組織も大事ですが、現在では事業家「個人」の力が、世界に影響を与えることも多くあります。一個人のイノベーションが世界を変えた事例としては、下記のような方々があげられます。
▶ 故スティーブ・ジョブズ氏(Apple)
▶ ビル・ゲイツ氏(Microsoft)
▶ ラリー・ペイジ氏・セルゲイ・ブリン氏(Google)
▶ ジェフ・ベゾス氏(Amazon)
往復のフライトで「ZERO to ONE」(ピーター・ディール、ブレイク・マスターズ著、NHK出版)を読みました。オンライン決済サービス・ペイパル(PayPal)の共同創業者で、シリコンバレーで圧倒的な存在感を放つピーター・ティール氏が母校スタンフォード大学で行なった「起業論」の議事録です。
以下、私にとって印象的だった部分をピックアップし、要約します。
1)逆張りである
冒頭でピーター・ティール氏はこう問いかけます。
「賛成する人のほとんどいない、大切な真実とは何か?」
「誰も築いていない価値のある企業とはどんな企業だろうか?
2)競争を嫌う
「ビジネスは人類のためにかつてないほどの価値を生むことであり、誰かを叩き潰すことではない。」」米国企業は時にはライバル企業同士が合併することも多く、日本企業のように業界内での戦いに明け暮れることはないようです。
3)WHATが重要である
「重要なのは何をするか?だ。自分の得意なことにあくまで集中すべきだし、その前にそれが将来価値を持つかどうかを真剣に考えた方がいい」
4)集中することが重要である
「保険をかけてはいけない」(ポートフォリオを組んではいけない)
「ひとつのもの、一つのことが他の全てに勝る」
5)創業者とチームの関係が違う
「企業は、人々が創業者を必要としていることを自覚しなければならない。だから、創業者の偏屈さや極端さにもっと寛容になるべきだ。・・・(中略)・・・何よりも、自分の力を個人のものだと過信してはならない。偉大な創業者は、彼ら自身の仕事に価値があるから重要なのではなく、社員みんなから最高の力を引き出せるから重要なのだ。」
故スティーブ・ジョブズ氏は、倒産寸前であったアップル社にブランクを経て復帰し、新しい価値の創造に取組みました。その後、iPhoneやiPadを相次いで発表したことから、創業者の偉大な力を見せつけました。
また、チームの重要性も日本とは違う感覚で運営されているようです。小人数のチームが没頭して仕事に取組み、テクノロジーを武器に勝負をかける。個性(創業者)とチームの両輪により、社会に大きな変化を呼び起こす。
「圧倒的な価値を生み出すものに全てをつぎ込む覚悟で挑め!」という主張は迫力がありますね。