経営メモ「カリスマの引退、政治の世界・企業の世界」(Vol.39)


政治の世界では…

政治の世界では、投票の秘密が守られなければ民主的とは言えないでしょう。

なぜなら、時の権力者は選挙民の投票行動に何らかの影響を及ぼしたり、意に沿わない投票に対して報復したりすることが考えられるからです(先進国では考えにくいですが、新興国ではありえる話です)。

したがって、秘密投票は「自由な投票」を保証するために必要なものとして正当化され、民主主義の基盤ともいえます(日本国憲法は15条4項でこれを規定)。

企業の世界では…

企業の取締役会の採決は、「挙手により行う」ものだと私は思い込んでいましたが、実際には会社法は取締役会の採決の方法には何ら規定をしていません。従って、無記名の秘密投票も容認されます。

ちなみに、セブン&アイ・グループで大きな関心を集めた重要子会社(セブン-イレブン)の社長人事に関する取締役会決議は、無記名での日いつ投票だったと報道されています。

秘密投票で行なわれる取締役決議

まず前提として、これほど大きな会社ですから、株主は取締役に経営を任せています。

取締役は、それぞれ株主総会で選任される際に、自らの経歴を株主総会招集通知に記載し、取締役としての適格性を株主に判断してもらいます。株主側からすると「どういう人か?」「どういった経営をするのか?」は、取締役の選任に関する唯一ともいえる基礎情報になります。

従って、取締役会での議論や投票行動は、株主にとって重要な情報になるはずです。取締役会決議が秘密投票で行なわれるのならば、取締役の任務遂行に関する情報がわからなくなってしまうのではないか?というのが私の疑問です。

カリスマ経営者の引退のタイミング

そもそもの始まりは「鈴木会長は息子を後継社長にしようとしている」という義ねんを周囲(例えば、創業家である伊藤名誉会長、「物言う株主」であるサードポイント、今回の投票で反対票を投じた取締役、セブン&アイの社員)が持っていたことです。

本件について様々な報道や見解がなされていますが、「カリスマ経営者である鈴木会長は、今回引退するべきではなかった」というのが私の考えです。その理由は次のとおりです。

・今回の退任により、この疑念が確信に変わってしまった。つまり、鈴木会長の人事案が否決されても経営を続けたほうが、その実務にふさわしい花道をかざれた

・本当に息子を後継者にしたかったのならば、息子が実績を出すまで待ち続けるべきだったのではないか?(世襲がいいかどうか?の判断はここでは振れないことにします)

・このような騒動でも起こらない限り、退任のタイミングが見つけられなかったというのが本音なのかもしれません。

今回のセブン&アイ・グループの「お家騒動」は、昨年の大塚家具と同じく、しばらくは転換点として語られることになるでしょう。皆さんはどう考えられましたか?

 

 

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