経営メモ「価格戦略と商品開発」(Vol.37)


薄利多売か、厚利少売か

「値決めは経営」

これは京セラ創業者である稲盛さんの言葉です。その解説を稲盛さんのオフィシャルサイトから引用します。

「経営の死命を制するのは値決めです。
値決めにあたっては、利幅を少なくして大量に売るのか、それとも少量であっても利幅を多く取るのか、その価格設定は無段階でいくらでもあるといえます。

どれほどの利幅を取ったときにどれだけの量が売れるのか、またどれだけの利益が出るのかということを予測するのは非常に難しいことですが、自分の製品の価値を正確に認識したうえで、量と利幅との積が極大値になる一点を求めることです。」

混迷するマクドナルドの商品戦略

さて、マクドナルドが苦しんでいます。先日発表された2015年12月期の通期の連結決算では、PLの冒頭が以下のような数値となっていました。

直営店売上高  142,539百万円
直営店売上原価 143,138百万円

直営店に限ると「売上総損失」が発生しているということになります。(他にフランチャイズに関する売上と売上原価があるのですが、それは省略します)

報道によれば(日本経済新聞2016年2月22日)「同じチキンを使ったバーガーで3倍以上の価格差がついている」「チーズバーガー2個の合計金額(1個130円・2個260円)が、ダブルチーズバーガー1個(1個340円)の金額よりも安くなっている」そうです。

通常は2つ買うよりも割安になるため、ダブルにすると考えるでしょう。マクドナルドの価格設定は、消費者から首を傾げられることが多いようです。

ブランドを回復させるためには?

デフレ時代に巧みに価格を変更して「デフレの勝ち組」と称されていた時代とは隔世の感があります。要するに、複雑化した商品ラインナップを自分たちでも把握できていない、自分の強みを認識できていない、ということになるのではないでしょうか。雑誌等でも、クーポンを多様した値引き戦略についての効果が問題視されているようです。

では、マクドナルドは何をすべきでしょうか?

もちろん止血をすべく、店舗閉鎖を進めることは必要です。ただ、今回の決算数値やプライシングの混迷から、目先の売上獲得のためのクーポン活用等による値引きや価格変更は、数年単位で考えると無意味なやり方であると断言できます。

やはりしっかりとした商品開発を行い、分かりやすい価格で自分たちの価値を訴求することが、お客様から「飽きられてしまった」ブランド回復につながるのではないでしょうか。

シンプルな製品戦略

経営危機に瀕したアップルを1996年に復帰したスティーブ・ジョブズ氏が立て直しました。まず行なったことは、担当者でさえ覚えきれないほどに乱立していた同社の製品ラインナップをシンプル化し、4つの製品に絞り込んだことです。

●一般ユーザー(Consumer)向け:ノートパソコン(Portable)とデスクトップ(Desktop)

●プロフェッショナル(Professional)向け:ノートパソコン(Portable)とデスクトップ(Desktop)

この4製品のみを製造する、という戦略です。製品のシンプル化、ぜひ参考にしてください。

 

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