2015.12.01

経営メモ「『M&Aサミット2015』伊藤元重教授へのインタビュー」( Vol.33)


2015年10月23日(金)に開催した『M&Aサミット2015』では、東京大学大学院経済学研究科 伊藤 元重 教授 にインタビューを行いました。その一部をご紹介いたします。

 

「中国経済は危機に発展するのか?」

【中 村】

企業経営者はやはり目先の景気がどうしても気になるものです。日本経済は、アベノミクス、そして東京オリンピックの開催と続いており、企業経営者の多くはたとえ消費増税が2017年に行われたとしても、2020年までは今の「まずまずの好景気」は維持できるのではないか?と考えている方が大多数かと思います。

それを維持している要因の一つに「インバウンド需要」というものがあり、その代表が中国になるかと思いますが、中国の景気はどのように考えていらっしゃいますか?

【伊藤教授】

「経済危機というものは、来る、来る、と言われていてもなかなか来ない。」
マサチューセッツ工科大学の故ルディ・ドーンブッシュ教授は、10年程前にこのような名言を残し、学者の間ではこれを語り継いでいます。しかし、本当に経済危機に陥ると、あっという間に広がります。

たとえば、米国サブプライム問題のとき、2005、06年頃から「大変な問題が起きている」と一部では囁かれ始めていました。

2007年に入り、景気は低迷しているものの、それほど表面化しなかったため、何となく皆、安心していましたが、2008年9月に、リーマン・ブラザーズの経営破綻を契機として、一気にサブプライム問題が発生し、世界的な信用収縮に発展しました。

現在の中国経済は「良い均衡」

経済学者は、「良い均衡(Good Equilibrium)」と「悪い均衡(Bad Equilibrium)」があると表現しています。普段は「良い均衡」の中で経済活動が進んでいるものの、何かの契機があると「悪い均衡」に陥ってしまうことがあります。

現在、中国では株価や不動産価値が下落していますが、これは高すぎる値が調整されている段階にあり「良い均衡」といえます。つまり、現在の中国経済は調整局面にあるため、一機に世界恐慌の引き金に発展する事はないということです。

インバウンド需要で重要なのは、中間所得層の増加

中国は、強い中国(Strong China)と弱い中国(Weak China)の側面を併せ持ちます。鉄鋼、インフラ、住宅関連はひどい状態です。一方、インターネット関連企業などは大変好調のようです。これからは、IT関連サービス分野、また医療分野は可能性のある分野だと認識しています。

また、米国経済は中国経済の2倍の規模ですので、依然として重要です。現在、利上げを検討しており、とてもいい状態です。

インバウンド需要にとって本当に重要なのは、中国の経済成長ではなくて中間所得層が増えていることです。彼らが循環し始めればインバウンドの需要が増えます。また、中国の爆買いの印象は大きいのですが、タイやインドネシアなどの需要も増えています。

企業経営の観点からみると、それらを伸ばしていけるようなビジネスモデルをどう作っていくのかが重要になってくると思います。

 

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