ジョー・バイデン氏がアメリカの第46代大統領に就任して久しいですが、私は氏の夢を実現させた年齢に刮目しています。家族の死や自身の病気など深刻な状況を経験しながらも、4度目のチャレンジでやっと大統領の座を手に。その時の年齢はなんと78歳。
私が50代半ばに差し掛かりつつあり、人生の後半戦が気になっているのかもしれません。生涯現役で活躍するために必要なことを考えます。
高齢で活躍する政治家・経営者たち
日本に目を向けてみますと、森喜朗さん(東京オリンピック前大会組織委員長)は83歳、麻生太郎さん(副総理兼財務大臣)は80歳、二階敏博さん(自民党幹事長)は82歳。
実業界では鈴木修さん(スズキ自動車の会長を退任後、相談役に就任)は91歳、多くのM&Aを成功させていると言われる永森重信さん(日本電産創業者)は76歳。
高齢ながらも現役で活躍している方は多いですね。
「仕事寿命」が伸長
日本人の平均寿命は延び続けており、男性が80.98歳、女性が87.14歳です。一方で、今重要な指標として考えられているのが「健康寿命」です。これはWHO(世界保健機関)が提唱している心身ともに自立し健康的に生活できる期間のことです。(男性は72.14歳、女性が74.79歳です。)
こう考えてみると「仕事寿命」とか「ゴルフ寿命」、「恋愛寿命」などあらゆるジャンルで寿命がある気がしますが、さながら前項の 高齢で活躍している政治家や経営者については「仕事寿命」が長くなっていると言い換えられるかもしれません。
人生のマルチステージ化を生き抜くヒント
寿命の話題となると、どうしても避けて通れない一冊があります。
ベストセラーにもなりました「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略」(リンダ・グラットン、 アンドリュー・スコット著/東洋経済新報社)」です。
これまでの多くの人々は「教育→仕事→引退」という3ステージの人生を歩んできましたが、寿命が伸びれば70代、80代まで働くことが当たり前になるため、多様な仕事のステージを渡り歩く「マルチステージ」の人生を歩む必要が出てきます。
この本では、そのマルチステージを前提とした100年ライフを生きるために必要となる、お金に換算できない「無形の資産」を以下の3つと定義しています。
- ①生産性資産・・・
長年かけて培ってきたスキルや知識など、生産性や所得を向上させるために役立つ資産。マルチステージの人生のためには、生涯を通じて新しいスキルや専門技能を獲得し続けることが重要になる - ②活力資産・・・
肉体的・精神的健康や、友人や家族との良好な関係など、人に幸福感をもたらし、やる気を掻き立てる資産。健康は長寿化において価値を増す一方であり、中でも明晰で健康な脳を保つことは大きな意味を持つ - ③変身資産・・・
人生の途中で変化と新しいステージへの移行を成功させる意思と能力のことです。マルチステージの人生で、自らの再創造(リクリエーション)を続けるための対処能力を促す要素とも言える
健康、栄養、医療、などの分野におけるイノベーションによって平均寿命が上昇し、長寿というものが人類にとって「贈り物」となった時代に、「どう充実した人生を生きていくか?」について大きなヒントを与えてくれる本ですね。
大統領へのチャレンジを続けたバイデン
さて、話をバイデンに戻しましょう。
自分の生きたいように生きたい。アーリーリタイヤしたい人もいれば、死ぬ直前まで仕事をしていたい人もいる。後者の人にとっては、バイデン大統領はあこがれの的ではないでしょうか。
初めての大統領へのチャレンジは45歳の時。もし大統領に当選していればジョン・F・ケネディに次ぐ2番目に若い大統領になっていたとされますが、論文盗用などの疑惑があり、立候補を取りやめます。同年、脳動脈瘤の破裂で2度の手術を受けています。
2度目のチャレンジは66歳の時。オバマ前大統領とクリントン元国務長官の争いに加わることはできませんでした。3度目のチャレンジは73歳の時。最終的には立候補を見送りますが、背景には46歳の長男を脳腫瘍で亡くしていることがあるとされています。
生涯現役で活躍するために必要な「夢」
4度目のチャレンジでやっと手に入れた大統領の座。
バイデン大統領の人生では「光」よりも「影」の部分がフィーチャーされることが多いですが、バイデン大統領を突き動かしていたものは何だったのか。
「夢や希望を見失わない」「見果てぬ夢を追いかけ続ける」
何がなんでも大統領になってやるという夢と、夢を実現させるという意思が、バイデン大統領をここまで駆り立てていたのだと思います。
「元気だから働く」のか、「働くから元気になる」のか。
恐らく後者が正しいでしょう。バイデンのように、生涯現役で活躍するためには、「働き続けるための精神的な源」、言い換えれば「夢」や「希望」が必要不可欠ではないでしょうか。