経営メモ 働き甲斐と働きやすさ(Vol.85)


採用面接で応募者からよく聞かれる質問ナンバーワンは「残業はどのくらいありますか?」のようです。

時代の流れ、とはいえ、昭和の時代を知る経営者の方々の中には、どこかに違和感を覚える方もいるのではないでしょうか?

今回は、使い古された言葉になってきた感もある「働き方」について少し掘り下げて考えたいと思います。

求職者は本当に「働きやすさ」だけを求めているのか?

面接を受ける求職者(応募者)の立場になると、残業時間の長さが気になるのも理解できます。過酷な残業は社会問題になりましたし、今や残業時間の長さはブラック企業のレッテルを貼る一つの目安です。残業が少ない企業は働き方改革が進んでいると評価もできますし、残業の長さを問う質問は、大切な質問であると断言できます。

ただ、この質問の裏に隠れているのは、自分にとっての「働きやすさ」を求める一方で、「プロフェッショナルになれるだけの体制が整っているのか?(教育、研修)」という思いですし、仕事に「やりがい」を求めているはずです。求職者は、きっと「やりがい」や「教育研修」が同じだとしたら「残業は少ないほうがいい」と考えて質問をされているのだと思います。

成長のために必要なのは「働き甲斐」

高いモチベーションを維持し、働き続けるために必要な観点は、この「やりがい」です。

ここでは、「働きやすさ」と対比させるために「働き甲斐」と言い直しておきます。

「働きやすさ」とは、「残業がない」「給料が高い」など、職場環境や労働条件といった外部から与えられるものです。一方の「働き甲斐」とは、「仕事を通して成長できる」「達成感を得られる」といった内面から湧き出るもので、モチベーションを高める動機付けとなるものです。

「働きやすさ」を求めるということは、仕事に対する不満をなくしたいという消極的な考え方で、一方、「働き甲斐」を求めるということは、「成長・承認」等の満足に感じる要素を求める、積極的な考え方です。どちらがプロとして活躍していけるか、自ずと答えは導き出せるのではないでしょうか。

プロフェッショナルに必要な“素振り”

もちろん、働きやすさと働き甲斐が両立できる環境が最高の職場であることは言うまでもありません。経営者たるもの、その両方を整備する努力を怠ってはいけないことは当然の事だと言えます。

しかしスキルをまだまだ身に付けなければならない新人や未熟であろう若年層が「残業は短い方が良い」ばかりを強調するのは少し違うと思います。極端に言えば、イチロー選手や大谷選手が一流選手になる前に「働きやすさ」を求めてしまっては、「イチロ―」や「大谷」になれるはずもなかった、ということです。「素振りは少ない方が良い」と言っているようなもので、そもそも「プロフェッショナル」を志向する考え方との間に矛盾がある、ということを受け止める必要があると思います。
(きっと適度にストレスがないと成長ってしないのではないでしょうか?)

将来得られる働き甲斐のために、また「成長」というキーワードから考えると、ある程度の「働きやすさ」を犠牲にせざるを得ない場面は、プロフェッショナルを目指す人にはあるのではないでしょうか。

 

 

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