さりげなく人を動かす話し方(2)- 意識や身体のテクニック(Vol.343)


中村 亨の【ビジネスEYE】です。

営業、プレゼン、部下の指導、スピーチ、クレーム処理等々…。
ビジネスシーンにおいて、「話す」場面は、待ったなしにやってきます。様々な場面で、相手との距離を縮め、心を動かす「話し方」を磨くことができれば、それは人生の大きな武器となります。

前回に続き、話し方の極意について作家・講演家の山﨑拓巳氏の著書『スゴイ!話し方』(かんき出版)をもとにご紹介します。

本日のビジネスEYEでは、「さりげなく人を動かす話し方(2)」を考えます。

雰囲気を作って相手を引き込む話し方

前回のメルマガでは、
・相手の価値観を知って呼びかけ、その人の欲求と行動を結びつける
・相手に届くのは『手垢のついていない言葉』
などをご紹介しました。

営業やプレゼンの際に、特に重要となるものは何でしょうか?話の内容はもちろんですが、「話す際の身体の使い方」も重要になります。

「相手とセッション」を意識

山﨑氏は以前、プロ歌手から「歌い方レッスン」を受けたことがあるそうです。その中には、「話し方の秘技」に通じる教訓が多く含まれていたそうです。

【プロ歌手からのアドバイス】
・目の前のお客様とセッションしているつもりで歌うこと
・独りで歌うのではなく、お客様との関係性で歌うこと

お客様との関係性を意識することで、視野が広くなり、本来の目的である「伝える」という目的が明確になります。

「みぞおちから上は顔」

上手に歌おうとすると、ついつい猫背になり、マイクにしがみつく格好になる人が多いそうです。顔だけではなく、「みぞおちから上を顔と思って伝える」ことで、身体の使い方が改善され、よりプロフェッショナルな空気感が伝わるといいます。

プレゼンやセミナーで話す際は、身体の使い方を意識することで、「伝わる度合い」がアップし、相手に伝わりやすくなるでしょう。いい姿勢や声、ほどよいジェスチャー、観客との関係性などを意識して話をすると、内容がより一層引き立ちます。

「やる気のスイッチ」を入れるキラーフレーズ

実際に山﨑氏が使っているキラーフレーズを抜粋してご紹介します。それぞれの場面において、相手との距離をグッと縮められる言葉の数々。こうした言葉のストックを持つことで、商談・会議などにおいても、スムーズに相手の懐に入りこむことが可能となるといいます。

● 初対面の相手との距離を短時間で縮めたいときのひと言・・・「もう◯◯さん、ムチャクチャ好きです!」

● お客様から絶対に「YES」を引き出したいときのひと言・・・「ここはもう、決定ということでいいですか?」

● 会議で沈黙になったときのひと言]・・・「ぶっちゃけ、どうですか?」

● 謝罪しなければならないときのひと言]・・・「そう思わせてしまったということは、そうしてしまったことと同じだと思います。本当にごめんなさい」

● 仕事でどうしても協力を仰ぎたいときのひと言]・・・「これは仕事ではなく僕のワガママなんです」

大勢の心をつかむ話し方

講演者だからこそリラックスする

セミナーや講演など、大勢の人の前で話をするときに心がけておくこと。それは、「聞いている人より自分の方がリラックスしていること」だそうです。講演者が緊張していると、聞いている方にそれが伝わり、話の内容が頭に入らなくなってしまうそうです。可能であれば、導入部分は雑談や近況報告といった軽めの話をし、気付いたら世界に引き込まれている、そんな流れを構築したいものです。

「ワーク」や「笑い」で会場のカタさをほぐす

会場の雰囲気がカタイ時はどうすればよいでしょうか?そうしたときに有効なのが、「ワーク」です。例えば、「最近あった嬉しかったことを隣の人と1分間シェアしてください」というワークは、会場の雰囲気を大きく変える働きがあるといいます。会場がカタイかどうかは、会場からのリアクションで判断できます。

さらに「笑い」も有用な手段です。ワーク同様、会場の雰囲気を和らげ、お客様をリフレッシュさせることで、飽きさせないといった効果があります。
「本日の主催の〇〇さんと初めて会ったのは…」
「〇〇市に来るのは確か3年ぶりと思うのですが…」
自分と主催者の関係性や、会場である地域の土地柄との関係性からも笑い話を展開することができるでしょう。

まずは相手を知ること

元リクルートで東京都初の民間人校長として杉並区立和田中学校の校長を務めた藤原和博氏の著書『もう、その話し方では通じません。』(KADOKAWA/中経出版)では、会話での最重要ポイントは「相手の頭の中にあることで話をする」だと述べています。相手の事をまず知ることが大切であり、そのために、相手との共通点を想像して、聞くことや問いかけることが必要だといいます。

「相手の目線に立ち、相手を知る」という観点では、説得の場面でも効果を発揮します。「論語」や「孫子」と並び人気の高い中国の古典「韓非子(かんぴし)」には、現実的な「人間関係の対処法」が描かれています。

「説得の難しさは、自分がその内容を理解することの難しさではない。自分が上手に説明する難しさでもない。相手の心を読んで、自分の説をそれに合わせることにある」「名誉を求める人間に、儲け話について提案しても乗ってこない。また、儲け話が聞きたい人間に、名誉の話を提案しても、これまた効果はない。儲け話が聞きたい人間には儲け話を持っていくことで、効果的な提案やセールスができるのだ」と訳されています。

人を動かす話し方をするためには、相手を理解しようと不断の努力を重ねることが不可欠です。その上で、意識の向け方や身体の使い方などのテクニックを磨き続けることで、聞き手を感動させる唯一無二の存在になることができるでしょう。話し方の向上は、キャリアや人生の可能性を広げるに違いありません。

 

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