AIの普及と働き方への影響(1)- 雇用崩壊はすぐそこ?(Vol.344)


中村 亨の【ビジネスEYE】です。

AlphaGo(アルファ碁) 「世界最強とされるプロ棋士に3連勝」
Watoson(ワトソン)  「わずか10分で難症例患者の正しい病名を見抜き、医師に治療法を提案」

多分野において驚異的な進化スピードをみせるAI。近い将来、人間に匹敵する知性を持つAIが普及し、人間の仕事を奪うと予測されています。

本日のビジネスEYEでは、「AIの普及と働き方への影響」について考えます。

AIが人間の仕事を奪う時代がきている

最近、スーパーやコンビニなどで見かけるようになった「セルフレジ」。つり銭やレシート発行などの会計機能を備えているため、そう遠くない将来に、レジ係は現状の半分以下になると推測されています。また、経理事務員や銀行窓口係といった職種もAIに置き換わるとみられ、ホワイトカラーの代表格である弁護士や税理士といった「士業」でさえも全滅時代が来ると言われています。

驚異的な進化スピード

米グーグル傘下のディープマインド社が開発した囲碁AI「AlphaGo(アルファ碁)」。昨年、プロ棋士を負かしたことで、大きな注目を集めました。大方の専門家が「人間に勝利するにはあと10年かかる」と声を揃えていましたが、それを一気に短縮してみせたのです。

AlphaGoは対局中、解説者にも「悪手」と映るほどの常識外れの斬新な手を打ち、プロ棋士を困惑させました。しかし、盤面が進んでいくと、次第にAlphaGoが有利な展開になっていたそうです。

AIは第3次ブームの渦中にある

2010年代からAlphabet(Google)、Intel、Microsoftなどの名立たる大手IT企業が挙ってAI関連のスタートアップへの投資を行ってきました。現在は、第3次ブームの真っただ中です。ブームの一因として、インターネットの普及によりデータ量が飛躍的に拡大したことが挙げられます。これまで成し遂げられなかった深層学習(ディープラーニング)が可能となりました。

雇用崩壊はすぐそこ

AI普及に伴い、人間の仕事が消滅するタイミングは、すぐ目の前にまで迫っています。無人ドローンが配達員の仕事を奪い、自動運転者がバスやタクシー運転手に取って代わるでしょう。また、電気使用量をチェックする「検針」の仕事は、使用料を自動計測する「スマートメーター」が全家庭に普及する2020年ごろに確実に消滅します。

2025年頃になると、言語の意味を正確に理解できるAIが登場すると言われています。通訳や翻訳家、ホテルマンといったコミュニケーションを必要とした仕事が脅かされるでしょう。人間がこれまで「勘」や「経験」で進められてきた専門性の高い仕事も、AIは「学習」することで、人間以上の効率で仕事をするようになるでしょう。30年後には人口の1割しか働けなくなるとの試算もあります。

2017年6月、三井住友銀行は今後3年間で、全店舗をペーパーレス化し、相談業務を中心とする次世代型の店舗に移行すると新聞のインタビューに答えています。事務作業を事務センターに集約、AIを使って作業の効率化を図ることで、約4,000人を新たな事業部門に移すそうです。

すでに日本の金融業界ではフィンテックという言葉も普及し、投資信託の助言などは「投資ロボアドバイザー」というAIが稼働しています。今後、AIはさらなる変革を金融業にもたらすと予想されています。

一方、AIについては、警戒論も一定数存在します。英・宇宙物理学者のホーキング博士は、2014年にBBCのインタビューに対して、「完全な人工知能を開発できたら、それは人類の終焉を意味するかもしれない」と述べ、慎重に取り組む必要があると発言しています。

企業では「導入コスト」が足かせか

安倍内閣の第4次成長戦略のなかで、ロボットやAI、IOTを活用することで産業構造を大きく転換するとの方針が示されました。少子高齢化が著しい日本においては、労働力不足を補う観点からも、AIの活用が求められていると主張しています。

今後の大きな流れとしては、AIが人間に代わって働く場面が増えそうですが、一般企業においては導入コストが当面の課題となるでしょう。短期的には、人間とAIが共存・協調して働くことにより、より少ない人数で同等以上の業務を遂行できるようにしようとする姿勢が、少子高齢化の日本においては大切な観点となると思われます。

 

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