中村 亨の【ビジネスEYE】です。
今月より月に1度、相続・贈与・遺言等に関する話題をお届けします。
さて、11月29日に「小規模宅地等の家なき子特例に制限をかける」という報道が流れました。過度な節税対策にストップをかけることが狙いですが、そもそも”家なき子特例”とはどのような内容なのか、弊社がお受けした相談対応事例を基にご紹介していきます。
「小規模宅地等の家なき子特例に制限をかける」とは?
小規模宅地等の特例について
「小規模宅地等の特例」とは、亡くなられた方(被相続人)が所有していた居住用・事業用・貸付事業用の土地について、一定の条件に該当すれば、相続税評価額を減額してもいい、という特例です。もっとも身近な居住用の特例では、土地の相続税評価額を80%減額させることができます(限度面積は330㎡)。
”家なき子特例”について
亡くなられた方の居住用の土地について、居住用の特例を受けられるのは「配偶者」「同居親族」「家なき子」に限られます。
「家なき子」とは被相続人に配偶者や同居親族がいなかったこと、相続開始前3年以内に本人又は本人の配偶者の所有する家屋に住んだことがないこと等が条件となっています。つまり、基本的に賃貸暮らしをしていた相続人が、実家の土地を相続する際に適用を受けることができます。
それでは今回の相談対応事例を見ていきましょう。
相続のご相談内容
都心に住む一人暮らしの母親に相続が発生しました。土地の評価額が想像以上に高く納税資金が足りません。何か適用できる特例はないでしょうか?とのご相談です。なお、相続人である長男は賃貸暮らしをしていました。
【家族構成】
母 (被相続人)
長男(法定相続人)
【財産構成】
自宅土地 1億円
自宅家屋 1,000万円
預貯金 500万円
【日本クレアス税理士法人の対応】
ご長男は3年以上賃貸暮らしのため、「家なき子」に該当することを説明。その土地を相続税の申告期限まで保有し続けることで、土地の評価額は2,000万円となり、特例適用の申告書を提出することによって納税額は0円となりました。
「家なき子」特例の活用ポイント
今回のケースはシンプルな「家なき子」特例の活用ですが、今注目を集めているのは明らかな節税を目的とした特例の利用です。子が孫に家屋だけを贈与することで、「家なき子」特例の適用を受けようとするもので、土地と違って家屋は評価額が低く、贈与税もさほど高額にならないので比較的簡単に贈与が可能です。また、贈与後も子はそのまま住み続けられますので日常生活に不便も生じません。
こういったケースは意図的な租税回避という事で、相続開始時に賃貸として住んでいた家がもともとは自分が所有していたものや、3親等内の親族が所有する家に住んでいたりすると、適用対象外にする、というのが政府の動きです。
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