2018.02.09

ビジネスEYE Vol.360


中村 亨の【ビジネスEYE】です。

平成29年版中小企業白書によると、中小企業経営者の年齢のピークはこの20年間で47歳から66歳に移動しており、事業承継がなかなか進んでいない状況が垣間見えます。

事業承継が円滑に行われない背景のひとつに、税負担の重さがあります。この負担を軽減するために設けられているのが「事業承継税制」で、平成30年度の税制改正では大幅に要件が緩和されました。
今回のビジネスEYEで、改正のポイントを具体例とともに確認してみましょう。

◇◇‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
◇◆ 事業承継税制が使いやすくなります
◇◇‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

———————————————————————————
◆ 事業承継税制とは?
———————————————————————————

後継者へのバトンタッチには、同族会社株式の生前贈与、相続により多額の税負担が想定され承継が円滑に進まないことが社会問題になっています。その税負担を軽減するために、後継者が会社の株を生前贈与や相続によって取得した場合に納税を猶予する『事業承継税制』という制度があるのですが、制約が多く使いづらいものでした。
しかし平成30年度税制改正で、この『事業承継税制』が非常に使い勝手がよく効果的なものになり、スムーズな承継への追い風となると期待されています。
それでは改正のポイントを確認していきましょう。

———————————————————————————
◆ ポイント1:承継パターンの拡大
———————————————————————————

改正前: 一人の先代経営者から一人の後継者への贈与
改正後: 複数の贈与者から最大3人までの後継者への贈与

同族会社株式が先代経営者のみならず、その兄弟姉妹にまで渡っていることはよくあることです。つまり後継者の叔父叔母等です。一人の先代経営者から一人の後継者への贈与に限定されていたものが、複数の株主からの贈与に対応できるようになるので、後々の揉め事を先代経営者の代で解決することが可能になります。

———————————————————————————
◆ ポイント2:納税猶予の対象となる株式数と納税猶予額の拡大
———————————————————————————

改正前: 総株式数の2/3に達するまでの株式が対象で、相続税の80%まで猶予(贈与税は100%)
改正後: 全ての株式が対象で、相続税の100%猶予            (贈与税は100%)

全ての株式を納税猶予の対象にすることが可能となり、資金確保の面で大幅な改善が行われました。

———————————————————————————
◆ ポイント3:雇用確保要件の緩和
———————————————————————————

改正前: 一定の基準日において、5年間の平均で雇用の8割を維持
改正後: 維持できない理由を記載した書類の提出があれば納税猶予は継続

会社の規模により数名の退職で雇用維持条件からはずれる懸念がありました。実行に踏み切れなかった経営者もひとまず安心です。

◆ 具体例————————————————————–
≪状況≫
 株価6億円
 先代が100%保有
 子である後継者に全株式を生前贈与

≪贈与税額の計算≫
(1)贈与税額:6億円 - 110万円 × 55% - 640万円 = 3億2,299.5万円
(2)猶予額 :4億円(※)- 110万円 × 55% - 640万円 = 2億1,299.5万円
         ※6億円 × 2/3 = 4億円
(3)納税額 :(1)-(2)=1億1,000万円

株価が高い場合にはかなりの納税額がでましたが、全株式が猶予の対象となることにより改正後の納税額は0円となります。

◆ ポイント———————————————————–
今回の特例で贈与・相続・遺贈により取得した株式に係る贈与税・相続税が全額猶予されることとなりますが、10年間に限定した制度(適用時期は平成30年4月1日以降)です。株価が高額な場合や、株式が分散している場合には、この事業承継税制を利用することで、円滑な事業承継を進めることが可能になります。

先代経営者の影響力が大きいうちにぜひ弊社にご相談下さい。(※適用要件等まだ詳細が確定されていない部分がございます)

中村亨のビジネスEYE メールマガジン
日本クレアス税理士法人|コーポレート・アドバイザーズでは、会計の専門家の視点から、経営者の次の智慧となるような『ヒント』をご提供しています。