2018.03.08

ビジネスEYE Vol.364


中村 亨の【ビジネスEYE】です。

遺産相続のあり方について検討してきた法制審議会は、平成30年1月16日に相続関係の民法改正の要綱案をまとめました。
これが成立すれば、1980年の配偶者の法定相続分に関する改正以来、実に38年ぶりの相続関係における民法の改正となるとのことです。

今回のビジネスEYEでは、改正案の中でも注目されている配偶者の居住権について事例を踏まえて解説をしていきます。

相続後も配偶者が住み続けられる権利

◆ 民法改正案の要綱案がまとまりました。(平成30年1月16日発表)——–

遺産分割で揉めてしまい、残された高齢の配偶者が終の棲家であるはずの自宅を追われるケースが問題となっています。
そこで相続後も配偶者が引き続き安心して自宅に暮らせるように、2点の改正が予定されています。

① 配偶者の居住権の保護

配偶者が相続開始時(被相続人が亡くなった時)に居住している被相続人所有の建物に、自宅として住み続けることが出来る権利を
創設し、遺産相続の選択肢の一つとする。

② 遺産分割に関する見直し

婚姻期間が20年以上の夫婦が、配偶者に居住用の土地・建物を遺贈又は生前贈与したときは、遺産分割の対象としないものとする。

 

事例を基に、今回の改正案について考えてみたいと思います。

◆ 事例—————————————————————

主人と二人で暮らしています。息子が二人いますが折り合いが悪く交流はありません。
主人にもしものことがあれば、残される財産は自宅と預金が少しある程度です。
都心に住んでいるため自宅の評価額が高いこと、法定相続分では2分の1しか権利がないことを知りました。

◆ 家族構成———————————————————–


妻 (法定相続分1/2)
長男(法定相続分1/4)
次男(法定相続分1/4)

◆ 財産構成(相続評価額)———————————————

自宅(土地・家屋) 5,000万円
預貯金       1,000万円

 

【現 状】

法定相続分(5,000万円+1,000万円)×1/2=3,000万円が妻の権利であるため、
自宅を全て妻名義にすることが出来ない上、預貯金も手元に残りません。

【上記①の居住権を適用】 ※配偶者の居住権の保護

まだ法案が通っていないので、相続税法上居住権の評価がどのようになるかわかりませんが、法の背景から想定すると、
その評価額は低くなると想定されるため、評価額自体が法定相続分以下になれば自宅に住み続けられ、
さらに預貯金を受け取れる可能性もあります。

【上記②の遺贈又は生前贈与を適用】 ※遺産分割に関する見直し

あらかじめ自宅を妻に贈与又は遺言で遺贈した場合には、その自宅は遺産分割の対象から外れ、自宅に住み続けることが可能になります。
つまり妻は自宅を所有してさらに「1,000万円×1/2=500万円」を相続することが出来ます。

 

◆ ポイント———————————————————–

相続財産が少なくて、相続税が発生しなくても今回の事例のように遺産分割でお困りになる方はたくさんいらっしゃるかと思いますが、
相続がはじまってからでは手遅れの状態になります。

今回の改正により残された配偶者の方への救済措置が具体化された場合には、今まで以上に生前対策について真剣にお考えいただきたいものです。

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