2018.07.26

ビジネスEYE Vol.383


中村 亨の【ビジネスEYE】です。

世界中に従業員は27万人、売上高7兆9,822億円(パナソニックグループ)と、巨大企業であるパナソニック。(2018年3月31日現在/同社ウェブサイト)
2008年には「松下電器産業」から「パナソニック株式会社」へ社名変更、製品ブランドもPanasonicに統一し、世界戦略へ向けて一歩踏みだしたものの、2012年度・13年度と2期連続で7,500億円を超える最終赤字を計上し、プラズマテレビからの撤退や半導体工場売却といった事業再編を行うに至りました。

パナソニックは現在、長期的に成長できる企業へと変貌をとげるために、従来のやり方とは異なる手法をさかんに取り入れ、変化を促しています。

今回のビジネスEYEでは、「変化に賭けるパナソニック」を考察します。

 

100歳企業の挑戦

松下幸之助氏が1918年(大正7年)に「松下電気器具製作所」を大阪市に創業してから、パナソニックは今年でちょうど100周年。
「2灯用差し込みプラグ(1918年)」「白黒テレビ(1952年)」など、数々の画期的な電化製品を世に送り出し、また、1933年に松下氏が考案した「事業部制」は製品を一定の品質と納期で不特定多数の顧客に販売するためには抜群の効果を発揮しました。

しかし、半世紀が過ぎる頃には100近い事業部が乱立し、異なる事業部が同じ製品を手がけるなど、重複による無駄が生じていました。そこで、2000年に社長に就任した中村氏は、2001年に事業部制を廃止し、企画・開発や生産、営業などの業務内容ごとに組織を再編しました。また、現社長の津賀一宏氏も、「変身」を加速させようとしています。

 

危機感からシリコンバレー型への挑戦 ~パナソニックβ(ベータ)~

米カルフォルニア州マウンテンビューには、パナソニックが開発を進めている未来の家電「HomeX」の開発拠点があります。

仕事の進め方はシリコンバレー方式で、出社時間も退社時間も自由。Tシャツとジーンズというカジュアルな装いで、まるでスタートアップのような雰囲気があるそうです。仕事はSLACK(ウェブ上のコミュニケーションツール)を軸に進み、定例会議もほぼなく、その場の打ち合わせで物事が決まるといいます。

パナソニック本社と4つの事業カンパニーから選抜された様々な職種の若手が、今続々とマウンテンビューを訪れ、プロジェクトに参画しています。ここにいる3ヵ月間は日本の所属元のことは一切忘れ、新しいやり方で「HomeX」プロジェクトに取り組むことが求められるそうです。

「パナソニックβ」で採用されるのは、不完全でもとにかくアイデアを基にプロトタイプ(試作品)をスピーディに作り、それを直接顧客にぶつけてフィードバックを取り入れ改善しながらモノを作る「アジャイル型」という開発手法です。
市場調査を行い、きっちり商品企画を固めてから大量生産・販売を行う従来のパナソニックのやり方の対極にあるそうです。

ゼロから事業・市場を開拓する 「イノベーションの気概」「変化への柔軟性」が「パナソニックβ(ベータ)」の開発では求められているのです。

 

経営決定が遅くなっている

従業員が全世界に27万にもいるパナソニックは、組織も大きくなっています。
「家電」「住宅」「車載」「B2B」の4事業(カンパニー)は、それぞれが1兆円以上の売上高をもつ、1部上場企業クラスの大企業となっています。その結果、「入社以来、他のカンパニーの人と接触したことがない」のも普通という、タテ型組織となっているようです。

前出の「パナソニックβ(ベータ)」は、こうしたタテ型組織を打破すべく、「ヨコ」の繋がりを持たせる意味をもつ、未来に向けた戦略組織となっています。「パナソニックβ(ベータ)」への赴任経験者は累積100人を超え、帰国後も新たなプロジェクトを立ち上げる例も出ているようです。

【これまでのパナソニック】
組織:タテ割り組織
生産:大量生産大量販売専業

【パナソニックが標榜する未来像】
組織:ヨコの繋がりも重視する柔軟な組織
生産:尖ったモノを少量 スピード生産・販売
(参考:週刊ダイヤモンド/2018.7.14号)

米・インテルの創業にかかわった故アンドリュー・S・グローブ氏は『パラノイアだけが生き残る 時代の転換点をきみはどう見極め、乗り切るのか』(日経BP社/2017.9.14)のなかで次のように語っています。
「病的なまでの心配性(パラノイア)のみが、企業の命運を決めるような環境の変化を見抜く」。
これは現在もシリコンバレーの経営者たちに尊敬されているグローブ氏のモットーでもあります。

パナソニックも、今までの経験則が通用しなくなり、根本的な変化を要求されていると、強烈な危機感を抱いているのでしょう。
「新しい100年」に向け、今を戦略的な転換点と認識し、新しい方法を構築しようとしています。
次号のビジネスEYEでも、「変化に賭けるパナソニック(2)」をお届けします。

 

 

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