2018.08.16

ビジネスEYE Vol.386


中村 亨の【ビジネスEYE】です。

パナソニックは持続的成功の実現に向け、守りに徹することなく新しい取り組みを進め、自らを大きく変革しようとしています。

今回のビジネスEYEでは、「変化に賭けるパナソニック(3)」を考察します。

 

伝統にメス 製販統合80年ぶり

パナソニックの4カンパニー制のうち、家電を扱うアプライアンス社(AP社)は、売上高の約29%を占め、パナソニックを支える屋台骨となっています。AP社の2017年度売上高は2兆5,844億円。前年度より営業利益も6%増えています。

稼ぎ頭は冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどの白物家電で、中国での販売も伸びています。白物事業は社内での歴史が古く、経営危機の時も営業黒字を続けてきましたが、それ故に、社内の組織や力関係が固定化されやすい特徴も併せ持っていました。製造を担う事業部門と販売部門がそれぞれ独立して交わらず、パナソニックの社長以外は一体的に統括できない異常な状況にあったそうです。

こうした状況を打破すべく、パナソニック専務執行役員でAP社社長の本間哲朗氏は、2015年の就任後から「製販連結」に取り組みました。製造と販売部門が連携して機敏に動ける体制を整え、18年には欧州と米国の販売部門も本間氏の指揮下に入ります。

 

タテ割りの閉じたモノづくりを変革する

さらに、AP社はこれまで大阪および滋賀に分散していたデザインセンター拠点を京都に一本化し、今年4月に「Panasonic Design KYOTO」を開設しました。これは、東京、ロンドン、上海、クアラルンプールの開発センターのグローバルのデザイン本社拠点として位置づけるものです。

国や地域ごとに異なる生活文化を反映しつつも、日本のメーカーとしてパナソニックらしいデザインを提案するために、多くの人たちとコラボレーションする環境が必要と考えたそうです。新拠点は外部に開放され、内外の様々な人と交流しながらモノづくりが行われる場となりました。

 

「顔認証ゲート」の採用

上記の「Panasonic Design KYOTO」の移転や外部とのコラボレーションも、顧客目線の製品づくりを加速させているのでしょう。パナソニックの「顔認証ゲート」は、法務省入国管理局に採用され、2017年には羽田空港に、2018年からは成田空港等でも導入されました。現在、主に日本人の帰国手続きにおいて、本人確認の効率化が期待されます。

顔認証ゲートの導入にあたっては、厳格に顔認証を行う「技術力」と、初めての人や高齢者でも簡単、かつ安心・安全に利用できる「使いやすさ(デザイン力)」の双方が必要となります。家電づくりで培ったノウハウに加えて、ユーザーフレンドリーなデザインを融合できたのは、「技術×デザイン」連携によるところが大きいようです。

 

Cerevo社 創業者 岩佐氏が11年ぶりに古巣パナソニックへ

モノづくりを変革する意味では、パナソニックは新しいチャレンジができる人材を求め、同社を2007年に退職して、2008年にCerevo社を創業した岩佐琢磨氏らを会社ごと取得したことも話題となりました。正確には、Cerevo社から分社したShiftall社の全株式を、パナソニックが買収することを発表したのです。

Cerevo社は、ニッチでユニークな製品を少量生産して世界規模で販売するという、大企業にはできないマーケットにアプローチをしていました。そうしたモノづくりのノウハウや戦略が高く評価され、今後は、パナソニックのビジネスイノベーション本部と連携していくことになります。

岩佐氏は、「松下幸之助氏が立ち上げたベンチャー企業が大企業に成長する途中で失われた、アジャイルなモノづくりの技術をよみがえらせるのがミッション。」と述べているそうです。

大企業のパナソニックが、チャレンジャーの立場でモノづくりを行うこの取組みは、今までのやり方とらわれない、改革の一つとなるでしょう。
(参考:週刊ダイヤモンド/2018.7.14号)

 
先日、米電気自動車(EV)大手テスラ社のイーロン・マスク最高経営責任者は、テスラ株式の非公開化を検討していることをツイッターで明らかにし、話題となりました。公開企業を非公開化すると、四半期決算報告の必要がなくなり、テスラを最適な形で経営できる環境を構築するのが狙いと発言しています。

パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(AIS社)は、米テスラ向けに車載用の電池事業を手掛けています。テスラ初の量産型電気自動車の生産が順調に進めば収益は見込めますが、生産が遅れれば、その影響をもろに受けてしまいます。赤字幅が広がる一方のテスラが、万一の事態にでもなれば、成長を託したはずの事業で全社が大ダメージを受けることになる可能性があるでしょう。

とはいえ、稀代の起業家であるイーロン・マスク氏のテスラとの協業は、一定のリスクはあるものの、果敢にチャレンジする意欲を刺激するものとなるでしょう。

 

 

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