2018.08.23

ビジネスEYE Vol.387


中村 亨の【ビジネスEYE】です。

談合、汚職、カルテルなど、企業の不祥事が絶えることなく報道されています。そうした中、日本企業の間で、人工知能(AI)で従業員の業務用メールを解析し、談合や汚職などの不正を早期発見するシステムを導入する動きが広がっています。

今回のビジネスEYEでは、「AIのメール監視 不正の芽を摘む」を考察します。

 

談合や汚職の芽 AIが発見

日本でも電子化が進み、メールが社内外での重要な意思疎通の手段となっています。企業にとっては大変有益な情報が蓄積されていることから、メールを監視することで、企業をリスクから守る取組みが広がっています。

リニア中央新幹線の建設工事を巡る不正入札問題が2017年に発覚したことを受け、大林組は今年5月に「同業者からのメールは内部監査部門が内容をチェックし、AIの活用も検討する」と再発防止策を発表しました。あくまで検討段階としながらも、最新技術を活用するメール監視方針を掲げたのです。

 

メールの文脈も判断材料

現在、従業員のメールをチェックするAIシステムが急速に普及しているそうです。まず、企業が設定した「談合」「汚職」など不正に関連するサンプルメール等を数十通程度、AIに読み込ませることで、AIが判断基準を学習します。その上で、システムを企業サーバーにつなげ、社内や取引先との業務用メールをひとつひとつ分析するそうです。

そして、AIは膨大な数のメールからひとつひとつのメールを数値化し、一定以上の数値のみをまとめます。企業のコンプライアンス担当者は、AIがまとめた内容をチェックして、怪しいものは内部調査に回します。

AIは不正に関与しそうな単語を拾うだけではなく、文脈も判断材料とします。例えば「談合」を警戒している場合、営業担当者が他社と交わしたメールでは、単に「飲みましょう」としたものより、「久々ですね」や「個室をとります」などを含んだものを、より怪しいと見なすそうです。AIは「定期的に内密な話をしていたそうだ」と分析するからです。

 

運用コストやプライバシーの問題も

AIは日進月歩の進化をみせ業務の効率化に貢献する一方で、課題もあります。
一つ目は、導入や運用コストの高さです。500人規模の会社で年間数千万から1億円が相場ともいわれています。
二つ目として、従業員のプライバシーに関する懸念があります。全てのメールをAIが監視しているとなると、従業員としては気分が良くありません。会社がコンプライアンスのためにメール内容を精査することは問題ありませんが、無制限にどこまでも行えばプライバシーの侵害と抵触する恐れもあります。

導入前に、チェックの利用目的や内容をあらかじめ特定し、就業規定に定めるとともに、従業員に明示することも大切です。

 

予防策 刑事処分に影響

また、AIを使ったメールチェックシステムは不正防止につながるだけではなく、不正発覚後にも大きな意味を持つ可能性があるそうです。カルテルのケースで考えてみると、公正取引委員会、または外国の司法省からの課徴金や民事訴訟等に発展する場合もあり、非常に大きな被害を受けることになります。

そうした摘発を受けた場合に、日頃のコンプライアンス(法令順守)体制が刑事処分に影響するケースもあるようです。不正が発覚しても社内体制がしっかりしていれば、軽い処分になる例もあります。そうしたことからも、普段からコンプライアンス体制や内部監査の仕組みを構築しておくことが求められおり、AIによるチェックシステムの普及にもはずみがつくと見られています。
(参考:日本経済新聞 2018年8月14日)

 
生産性の向上が求められる現場では、人海戦術で社内外のメールチェックをすることはかなり難しい状況といえるでしょう。そこで、怪しく不適切な疑いのあるメールのみを検知できるAI技術を駆使した監視システムは、多くの企業から求められるでしょう。とはいえ、例外的な処理が必要な場合には、人間による対応作業が必要になります、担当者の「カン」がAIよりも有利に働く場合もあるでしょう。

AIはあくまで道具であり、従業員が緊張感を持った正しい業務を遂行できるように、人間とAIが補完しあいながら、コンプライアンス体制を高めることが求められます。

 

 

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