社員を変えるためにマイクロソフトが実践する10の習慣(Vol.388)


中村 亨の【ビジネスEYE】です。

マイクロソフトといえば、世界中で大旋風を巻き起こしたOSの「Windowsシリーズ」や、ビジネス向けソフトウェア「Office」など、知名度の高い製品があります。しかし、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)の台頭と比較すると、最盛期を過ぎた企業と思われている側面が否めません。そこで、マイクロソフトは2014年、CEOにサティア・ナデラ氏を抜擢し、同社の変革を求めました。その結果、見事復活を遂げています。

今回は、「社員を変えるためにマイクロソフトが実践する10の習慣」をお届けします。

 

変貌するマイクロソフト

マイクロソフトは、パソコンのOSで、世界90%以上のシェアを持つなど言わずと知れたソフトウェアの巨大企業です。しかし、AIの進歩やスマホの普及などビジネス環境が激変している現在、次の一手をどうするか、ビジネスモデルを検討する必要があったそうです。

そして、従来の「ソフトウェア」のライセンスビジネスから、「クラウド」へと大きく舵を切る時期が来たと判断し、変革を社員に求めたのです。変革は功を奏し、凄まじい勢いで成長を続けています。

【マイクロソフトの売上高】
1980年 800万ドル
1990年 1億8350万ドル
2000年 230億ドル
2010年 625億ドル
2015年 936億ドル

上記のように好調な売上を背景に、マイクロソフトの株価も右肩上がりに推移しています。
2013年1月に30ドル前後だった株価は、2018年8月29日現在は110ドルとなっており、最高値をつけています。期待値の高さがうかがえる株価となっています。

 

復活の象徴 サティア・ナデラCEO

2014年の時点で「全盛期は過ぎ去った」と評価されていたマイクロソフトをここまでの株価まで引き上げ、会社を復活させたのがサティア・ナデラCEOです。新しい方向性を示し、「ソフトウェア」から「クラウド」へと転換を図りました。

サティア・ナデラCEOは、インド出身で情報科学の修士号取得のために渡米し、マイクロソフト社に20年間以上在籍した人物です。優秀なエンジニアであるとともに、人に対してリスペクトの気持ちを強くもっている人物であるそうです。

同氏は、CEO就任後、過去に大成功したという「レガシー」だけの会社ではなく、今後も発展していくために成長していかなければならないと社員に伝えてきました。「自分が持っている知識を披露するよりも、継続的に学習しなければならない」「学習せよ、話すより聞け」というメッセージを発信していました。

社員たちに、「変化しなくてはならない」という現実を気づかせ変化を恐れずに前向きに取組むことを促しています。

 

新しいカルチャーに息を吹き込む10の習慣

マイクロソフトの変革がうまくいった背景にあるのが、まずはカルチャーの変革に成功したことでしょう。しかし、カルチャーを変えることは簡単なことではありません。一体どんなことをしたのでしょうか。

まず、サティア・ナデラCEO自らが、大胆なチャレンジを示したことが大きいでしょう。「ソフトウェア」から「クラウド」へと転換は、会社の根幹に関わる「事業の目的」を新たに定義するということに他なりません。本気で変化を望んでいることをCEO自身が示したことで、社員も意識が高まったようです。

また、経営幹部らに対して、「もっと会社としてリスクを取らないといけない」「成長のためにマインドを変えなければいけない」と鼓舞したそうです。たとえミスをしてしまっても学べばいい、次回の自分の仕事に活かせばよいと、大企業病にかかり保守的になりがちな社員を戒めたそうです。

そのように段階を踏んだのちに、下記のような「10つの行動規範」を作ったそうです。

【10 Behaviors for Inclusion】
(1)自分の前提条件を調べる
(2)質問する習慣をつくる
(3)すべての声が聞こえるようにする
(4)話す人が理解したと思えるまで注意深く耳を傾ける
(5)誤解に対処し不一致を解決する
(6)誰かに対して何かを強く感じたら、なぜかを自問自答する
(7)さまざまな背景を持つ人たちを受け入れ、彼らから学ぶ
(8)ストレスの多い状況を減らせるように行動する
(9)各自の貢献を理解する
(10)勇敢であれ

上記の「行動規範」は、内外のコラボレーションの機会が増えることを踏まえ、「チャレンジャー」の気持ちで仕事に臨むように社員を促しています。

成長を育み、イノベーションを育むカルチャーを醸成するためには、常に学ぶ姿勢を持ち続けることが不可欠なのでしょう。
学習、成長を育むカルチャーの浸透が、とりわけ大事となるようです。
(参考:『マイクロソフト再始動する最強企業』ダイヤモンド社/上阪 徹 著)

 
経営学者のピーター・ドラッカーは、「Culture eats strategy for breakfast.(文化は戦略を上回る)」という名言を残しています。
いかに素晴らしい戦略があっても、実際に社員一人一人が実行できるカルチャーがなければ変革はできないという内容です。

サティア・ナデラCEOも、カルチャーの変革は、事業発展に不可欠のものとしています。マイクロソフトの12万人の社員が本気になって学び成長すれば、自らの強みを生かしたビジネスがさらに生まれるに違いないでしょう。マイクロソフトの今後が注目されます。

 

 

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