2018.09.27

ビジネスEYE Vol.392


世界的な飲料・食品メーカーである「ペプシコ」を12年間率いた、インドラ・ヌーイ最高経営責任者(CEO)が2018年10月に退任すると発表されました。ヌーイCEOは、インド出身の女性です。健康志向が強まる世界のトレンドをいち早くつかみ、ペプシコを事業拡大に導いてきました。

今回は、「米ペプシコの世代交代と女性目線のM&A戦略」をお届けします。

 

米ペプシコとヌーイCEO

米ペプシコは、「ペプシコーラ」「ドリトス」「リプトン」など日本でも知名度のある食品ブランドを多く抱える企業です。飲料と食品という2つの分野を軸に成長し、時価総額1,641.5億ドル(平成30年世界時価総額ランキング47位)の大企業となりました。

ヌーイCEOは、1978年に渡米し、イェール大学で修士号を取得。その後、ボストン・コンサルティング・グループやモトローラ社においてキャリアを積み、ペプシコ初の国外出身CEOであり、同社初の女性CEOとなりました。CEOに就任した2006年には、約350億ドルだった同社の売上を、2017年には約630億ドル(約7兆円)にまで伸ばすなど、業績の向上に寄与してきました。

 

女性目線のM&A戦略

ヌーイCEOは、12年間のCEO職を含む24年間のペプシコ在籍期間に、スナック菓子「フリトレー」部門の成長に貢献してきたほか、同社の製品にフルーツジュースやナッツ、オートミールを含む、健康志向や身体に良い製品を増やしラインナップの多様化を図りました。

その結果、炭酸飲料がペプシコの売上に占める割合は2016年までに25%以下になりました。
これは、ボトル入り飲料水や砂糖不使用の飲料といった「自然飲料」の売上に等しいものです。

【傘下におさめた健康志向の主なブランド・企業】
・ジュース「トロピカーナ」
・オートミール「クウェイカー・フーズ」
・スポーツ飲料「ゲータレード」
・ドイツの乳業大手「テオ・ミュラー・グループ」
・低カロリーソフトドリンクで知られる「Izze」
・ブラジルのココナッツウォーター「Amacoco」
・野菜や果物を使ったスナックで知られる「ベア・フーズ」
・イスラエルの炭酸水メーカー「ソーダストリーム・インターナショナル」

買収時点ではマイナーなブランドであっても、ペプシコのリソースを利用して、海外市場への進出が可能となります。ヌーイCEOは、ブランドの強化とともに、中国やインドなど海外展開の強化を図り、業績を拡大しました。

 

ヘルシーなブランドへ

2000年代前半、米国では、脂肪に代わって糖類の摂取をできるだけ避けるべきだとする考えが広まり始めました。そして、砂糖が使われている炭酸飲料に対する見方も、厳しくなっていきました。そうしたなかヌーイCEOは、変化の必要性を主張しました。

ヌーイCEOは2010年、製品に使用される砂糖や塩を減らす、または学校には砂糖の入った飲料を置かないといったペプシコの一連の「コミットメント作り」を主導しました。投資家向けのカンファレンスでは、「世界で最も大きな公衆衛生上の課題の1つで、我々の業界と深く結びついている肥満の問題に貢献するのではなく、解決策を見出す必要がある」と述べています。子供をもつ母親でもある同氏は、企業トップとしても明確に会社の方向性を提示しています。

 

新しい成長市場 ココナッツウォーター飲料

米国では、全体的なジュース消費量が低下し続けていますが、近年、ココナッツウォーターが爆発的な人気を博しているようです。
ココナッツウォーターは、リフレッシュ感があり、健康志向、天然由来の低糖飲料で、従来のスポーツドリンクの代替品としてみられており、2021年までに全世界で70億ドル(約7500億円)市場にまで成長すると予想されています。

ペプシコは、2009年ブラジルのココナッツウォーター会社である「Amacoco」を傘下におさめましたが、米コカ・コーラも2013年に同事業を営む「Zico」社を買収しています。現在、タイのココナッツウォーターを扱う「カインド・バーズ」や「ビタココ」社に対して、国内外の大手食品・飲料会社が関心を寄せていると報じられています。炭酸飲料の需要が減少傾向にあることから、今後はココナッツウォーターを扱う企業を巡り国際的なM&A合戦が繰り広げられるでしょう。

 
 
ヌーイCEOは、「身近な生活の中にこそ顧客が抱える問題点がある」との女性目線で、ペプシコに大きな変化をもたらしました。また、戦略的な思考をいかんなく発揮して、グローバルな展開を強化しペプシコの業績向上に寄与しました。
後任にはグローバル事業トップのラモン・ラグアータ社長(男性)が就くと発表されており、米ペプシコがコカ・コーラをはじめとする競合他社との熾烈な競争にどう挑むか注目されます。

 

 

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