2018.10.18

アマゾンへの対抗策とは?(Vol.395)


急成長を続ける米アマゾン・ドット・コムが小売業界に旋風を起こしています。テクノロジーを武器に圧倒的な競争力を手中に収めたアマゾンは、インターネットの世界にとどまらず、実店舗の展開も本格化させています。

今回のビジネスEYEでは、「アマゾンへの対抗策とは?」をお届けします。

 

オンラインからリアルに進出

1994年にオンライン書店として事業を開始して以来、多角化戦略により急成長を続ける米アマゾン。そのアマゾンが、O2O(Online to Offline)へと触手を伸ばしています。2017年に米大手高級スーパー「ホールフーズ・マーケット」を買収したことで、アメリカやカナダなどの一等地に約460の実店舗を手中に収めました。

この店舗網を活かし、一部地域では会員向けに新サービスが提供されています。それが「カーブサイド・ピックアップ」です。すでにウォルマートなどが同様のサービスを展開していますが、ネットで注文した商品を指定されている店舗駐車場にて店のスタッフから受け取ることができるサービスで、米国内で人気となっています。

 

スマホがレジになるコンビニエンスストア

2018年1月、レジのいらないコンビニエンスストア「Amazon Go」が米シアトルに正式にオープンしました。最新AI技術が活用されており、スマホに表示させたQRコードをスキャンするだけで入場でき、その後は手に取った全ての商品が請求される仕組みです。一度手に取っても、商品棚に戻すだけでキャンセル処理が完了します。

日本でも同様の動きがあり、AI無人決済システムを使った無人決済店舗の実証実験が赤羽駅でテスト運用されています(10/17から2か月程度)。アマゾンは会員限定ですが、こちらはSuicaやPASMOなどの電子マネーを持っていれば誰でも使えるようです。

最新鋭のテクノロジーを駆使し、オンラインとリアルを融合していくアマゾンに対し、ライバルが恐れを抱くのは当然とも言えるでしょう。

 

小売業に波及する「アマゾンエフェクト」

「アマゾンエフェクト」という言葉をお聞きになったことのある人も多いでしょう。
アマゾンの影響力により、個別企業の消滅、業界の再編が地球規模で起きていることを表す造語です。

2018年10月15日、米小売りチェーン「シアーズ(Sears)」が、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請し、150近い店舗を閉鎖すると発表しました。創業1886年という歴史ある同社は、百貨店業の草分けとして、ウォルマートと並び業界の王者として君臨していました。しかし、インターネット通販の興隆を一因とする小売業の淘汰が進むなか、赤字経営が続き、経営破たんに至りました。

過去を遡れば、書店の「ボーダーズ」、スポーツ用品大手の「米スポーツオーソリティ」、米アパレルの「ザ・リミテッド」、玩具販売大手「米トイザらス(Toys R Us)」なども経営破たんに追い込まれました。インターネットの可能性を見誤った側面もありますが、何よりもアマゾンエフェクトが大きいでしょう。

 

生き残りへの突破口「商品」「顧客体験」「接客」

アマゾンエフェクトの拡大は、小売企業に店舗の存在意義は何なのか?という問いを突きつけることになります。本質に立ち返ると、「商品」「顧客体験」「接客」という3つの要素がみえてきました。

【商品】ディスカウント店大手の「トライアル」
「アマゾンなどに対抗するには、ネットでは買いにくい生鮮や弁当を強化すること」
 との方針のもと、低価格でもおいしい弁当作りのノウハウを現場に提供した。

【商品】ホームセンター大手の「カインズ」
 正社員、パートを問わず全社員が商品開発に参画し、PB比率を4割にまで高めた。
 メーカー製品とは一味違う商品を実現している。

【顧客体験】「蔦谷書店」
 福岡市六本松店では、ヨガ教室など多種多様なイベントを用意している。
 イベント関連書籍が売れるだけでなく、会場使用料をもらうかたちでもビジネスモデルを確立した。

【顧客体験】「無印良品」
 イオンモール堺北花田店では、実店舗ならではの体験を重視した売り場を展開。
 五感に訴える市場のような楽しさやにぎわいを生み出している。

【接客】ディスカウント店の「多慶屋」
 専門知識を持つ店員が丁寧に接客し、お客様にとって何がベストかを共に考えている。
 お客様との信頼関係が築き、「血の通った接客」を追求している。

【接客】「ジャパネットたかた」
 高齢化社会の今、電話対応にこだわり、シニア層の支持を勝ち取っている。
 生の顧客の声を吸い上げ、商品開発につなげている。
(参考:日経ビジネス2018.9.13)

 
 
10月11日、ユニー・ファミリーマートHDは、約2,119億円を投じてドンキホーテHDへの株式公開買い付けを実施すると発表しました。インターネット通販の台頭や少子・高齢化の流れに直面する中、従来の常識にとらわれずに、業態や中身を変えない限りは生き残れない危機感があるようです。「ドンキ」と組むことで、店舗を活性化させる狙いがあるとみられます。

強すぎる巨人がいることで、小売業を営む他の企業は、「アマゾンにできないことは何か?」「顧客のために自社は何ができるか?」といった存在意義を考え続けることになるでしょう。
サービスを享受する側の消費者にとっては、企業がレベルアップするため、利便性が高まり、より楽しくなるなど期待がもてます。

「amazoned」(アマゾンが強すぎて、消滅・淘汰させられる)ことを回避するためにも、小売業は「商品」「顧客体験」「接客」を軸に、事業を磨き続ける必要があるでしょう。

 

 

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