変わる会計 新リース基準(Vol.396)


国際財務報告基準(IFRS)の最新基準であるIFRS第16号「リース」が、2019年1月に発効されます。新基準では、これまで貸借対照表に計上していないオペレーティング・リースを資産と負債に計上することになります。そのため、IFRSを導入済みの企業においては、負債が増加することになるでしょう。

今回のビジネスEYEでは、「変わる会計 新リース基準」と題してお届けします。

 

IFRSでの「新リース基準」とは?

冒頭でも触れましたが、IFRS第16号が適用されると、借手におけるリース契約は原則すべて貸借対照表に計上(オンバランス)しなくてはなりません。つまり、リースした機械・機器などもすべて資産とみなされるということです。

リースには、「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース(オペリース)」の2種類があります。ファイナンス・リースは、事務機や機械、車両などに使用されるもので、途中解約ができず、貸借対照表にも計上(オンバランス)します。
一方、オペリースは、倉庫や飛行機、船舶など耐用年数が長い設備に活用され、途中解約が可能です。初期投資を抑えながら貸借対照表には計上しない(オフバランス)で済むため、企業側は手軽に活用してきました。

新基準適用により、オペリースがオンバランス化されますので、企業の事業実態をより正確に決算書に反映されることになります。なお、米国会計基準もこの動きに同調し、2019年1月からオペリースを貸借対照表に計上するようになります。

 

日本基準にも波及するか?

会計ルールの共通化が進む中、日本基準への影響が懸念されます。日本基準をつくる企業会計基準委員会(ASBJ)は、IFRSのリース新基準について、「日本基準を国際的に整合性のあるものとする一環で、会計基準の開発に着手するか否かの検討を行う」としています。この基準変更が日本でも導入された場合、リース業界はもちろん、不動産業界、小売業や金融業など、多店舗・多拠点に展開している企業は影響が大きくなる可能性があります。

 

IFRSの導入目的とは?

国ごとに異なる会計基準を世界的に標準化するために考案されたのがIFRSです。国内の海外事業を展開する企業では、すでにIFRSへ移行しているところも多くあります。2019年3月期には三菱重工業、京セラなどが適用予定となっています。

IFRSを導入することで、国内外の第三者に対して透明性の高い財務諸表を提示することが可能となります。つまり、世界標準の“物差し”が使用可能となったことで、優良な日本企業への投資が実行し易くなるのです。

経営の三要素「ヒト」「モノ」「カネ」。IFRS導入で世界中から「カネ」を集めやすくなり競争力の強化を図ることができ、また、グローバル展開していく上での信用も高まります。

IFRSをつくる国際会計基準審議会(IASB)のデービッド・トウィーディー初代議長は、「バランスシートに計上された飛行機に乗るまでは死ねない」が口癖だったそうです。将来的に、仮にIFRSの変化に応じて日本の会計基準の改正が行われるとなると、幅広い業種に大きな影響をもたらすことは必至であり、動向が注目されます。
(参考:日本経済新聞 201810.20)

 

「メルカリ」グローバル採用で海外人材の獲得へ

リマアプリ大手のメルカリが、10月1日に100名の新入社員を迎えました。その内訳は、グローバル採用が44名(9カ国)、そのうちインド国籍の方が32名。インド工科大学(IIT)の学生などが迎えられたそうです。

メルカリは2014年に米進出していることもあり、優秀な海外人材の採用を強化しています。世界的にITエンジニアの争奪戦が広がる中、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)と並び、サービス未進出のインドでも有名大学の学生の採用に成功したことになります。

ちなみにメルカリグループは、現行では日本基準で連結財務諸表を作成していますが、IFRS導入についても検討しており、「国内外の諸情勢を考慮の上、適切に対応していく」としています。

 
 
メルカリのように人材面からグローバル化を進めるか(ヒト)、会計を国際基準にして世界中から信用や資金を集めるか(カネ)、海外事業を展開している企業にとっては、中長期の成長を見据えた投資となるでしょう。日本企業においても、将来的な会計ルールの変化に適切に備える必要があります。

 

 

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