2018.11.01

ビジネスEYE Vol.397


全メニュー280円均一を掲げて、急成長してきた焼き鳥チェーンの「鳥貴族」。昨年10月の値上げ(280円→298円)を機に、顧客離れが深刻化しているようです。窮地に陥った今、大倉社長の「王道経営」が試されています。

今回のビジネスEYEでは、「試される鳥貴族の『王道経営』」をお届けします。

 

「均一価格」で快進撃

消費税導入以来、全品280円(税抜き)で顧客の囲い込みに成功した同社は、出店攻勢を続け、2008年には100店舗、2012年には300店舗を突破しました。また、2015年には東証2部、翌年には東証1部上場を果たしました。
-2018年9月末時点の店舗数は、672店舗(直営430店舗、TCC 242店舗)-

2016年10月からは「価格」だけでなく、「食材へのこだわり」を打ち出し、「国産国消ガイドライン」を制定し、フードメニュー全品を国産に切り替え、顧客満足度やコストパフォーマンスを強みとして成長を維持しました。

「280円均一」の肝は、原価率にあります。利益を確保する商品と薄利ながらも「これが280円!?」とサプライズ感を与える
商品を用意することで、顧客の心をつかむ仕掛けを施すことができるそうです。

【均一価格のメリット】
・感動させることができる
・明朗会計
・店舗側の教育・オペレーションが楽になる

 

18円の値上げによる業績悪化

2017年10月、「適正価格」に合わせるため、28年間続けた「280円均一」にメスを入れ、280円から298円へと値上げを断行しました。値上げだけが要因ではないでしょうが、以降は顧客離れが進んでいきます。

2018年7月期の決算は、大変厳しいものでした。売上高は前年比15.8%増の339億7,800万円、純利益は同31.6%減の6億6,200万円。一見すると好調のようにも見えますが、増収率は以前と比べて低下し、純利益は30%を超える大幅な減益率となったのです。

値上げに加え、天候要因や模倣店が続出したことが影響したようです。

 

効率化の落とし穴 タッチパネル導入の影響

値上げ後は、既存店売上高の前年割れが続いています。その原因を細かく見ると、値上げ以外の部分も問題なようです。
例えば、オペレーションの効率化を目指して導入したタッチパネル式の注文方法です。顧客との接点が減ったことで、ドリンクの注文数に影響がでたようです。店員を呼ばずにオーダーができると、顧客からの評判はよいのですが、「お代わりいかがですか?」といった声掛けの機会を失ったのです。まさに効率化の落とし穴であり、接客の見直しが進められています。

 

こだわりを伝える努力が必要か

さらに今、「焼き鳥戦争」といわれるほど、低価格焼き鳥チェーンの出店競争が激化しているそうです。
値上げを機に、鳥貴族から顧客が他店へと流出してしまったようです。

しかし、鳥貴族は、焼き鳥の旨味を最大限に引き出すために、国産の食材のみを使用し、タレも自社開発です。また、夜の仕事に集中するため、ランチ営業も行わず、店舗での串打ちにもこだわっています。

そうした独自のこだわりを消費者に伝えることが不足したまま値上げしたことも、「食材費高騰をそのまま価格に転嫁した」等の誤解を受けてしまったのでしょう。「国産食材であれば食べたい」「こだわりの焼き鳥を食べてみたい」と思う顧客も必ずいると思われます。業態へのこだわりを維持し、「価値」を高めるための値上げであるとの説明が必要でしょう。

 

王道経営を目指す

大倉忠司社長は、値上げを断行した理由としては、ステークホルダー(顧客、社員、株主、取引先、地域社会、金融機関)全員が幸せになれるための「適正価格」が298円だと説明しています。企業が永続的に成長するための根幹を大事にしたいとの想いがあるようです。

一般的に日本の外食産業は、顧客を獲得したいあまり、過剰に顧客満足を追い求める傾向があるようです。顧客の満足のためには、低価格を目指せばいいのですが、その場合、ひずみが生まれ、社員や取引先にしわ寄せが向かいます。そうしたブラックな企業は、続かないと大倉社長は考えているようす。

大倉社長は、「外食産業の社会的地位の向上」に貢献することも、会社の「使命」として掲げています。社員を犠牲にしながら相手を駆逐するような「覇道」ではなく、社員が誇りを持てるような地に足のついた「王道」の経営で勝ち残りたい。正々堂々と、正しい経営をしたものが最後は勝つと見通しています。
(参考:日経ビジネス2018.9.17)

 
 
鳥貴族は競争が激化する中で、揺るぎない「王道」の経営を掲げ、ヒット商品の開発や従業員の教育・待遇改善を行うなどして
消費者にとって本当に「価値のあるお店」を目指しています。
本当の勝負はこれからなのでしょう。

 

 

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