2018.11.08

「生産性アップの秘訣」(Vol.398)


「働き方改革」の大号令がかかり、生産性の向上や労働時間の削減に向けた取り組みに着手する企業が増えています。

かつては社員のやる気を高めるには、昇進や昇給、飲み会、運動会などで働く意欲を喚起したものの、社会環境の変化や価値観の多様化の現代では、何事も「一律に」「一斉に」とはいかなくなっています。

今回のビジネスEYEでは、「生産性アップの秘訣」をお届けします。

 

意欲低下を防ぐ取組み

日本生産性本部は17年12月、16年の日本の労働生産性が、主要7か国(G7)中最下位を記録したと発表しました。データ取得可能な1970年以降の46年間、先進国最下位から一度も抜け出せていません。また、有給消化率について、大手旅行サイト運営の米エクスペディアによる国際調査では、2017年の日本の有給消化率は約50%で、2年連続で世界30カ国中、最下位だったそうです。

こうしたデータからは、日本企業が生産性を高める必要があることがわかります。日本企業が以前から取り組んできた従来型の「やる気を高める方法」には、昇進や昇給といった「報酬」や「ポスト」を与える方法と、飲み会、運動会といった催しを通じて、職場を楽しくする方法がありました。しかし、従来の延長線上にある手法では効果が薄くなりつつあります。

一方、ビッグデータやAI(人工知能)を使った、データ解析技術と医学的知見をフル活用することで、「社員の意欲低下を一律に防ぐこと」は可能となりました。今回は、そうした取り組みについて、ご紹介します。

 

サイバーエージェント ~たった3問で意欲低下を把握~

一部の人間のやる気を上げるより、AI(人工知能)などの活用で意欲が低下する社員を未然に見つけ出し、全体の意欲を高レベルで維持した方が生産性は上がる。そうした発想のもと、サイバーエージェントは、やる気の落ちかけた社員を早期に発見するシステムを導入しています。

同社が15年に自前で開発したシステム「GEPPO」は、社員に毎月、働き方に関するアンケートを実施しその回答内容から「今後、やる気が低下する可能性が高い社員」を自動的に見抜くシステムです。選出された社員は、直ちに上長が面接するルールとなっています。

最大の特徴は毎回のアンケートが3問と極めて簡素な点にあり、また、いずれの質問も「仕事の満足度」を5段階で答えるといった単純なものばかりです。ビッグデータ解析によって少ない質問でも、長期的にみると社員それぞれの質問の答え方にはわずかながら一定のパターンが観測できるようになる。そんな平常時のパターンと微妙な差異から社員のやる気の変化を見抜くのです。

 

人間関係が円滑なチームが生産性向上に貢献

1924年から32年まで電子機器メーカーの米ウエスタン・エレクトリックが社員を対象に実施した「ホーソン事件」という生産性に関する実証実験があります。賃金から休息時間までどんな労働環境が作業効率などに好影響を及ぼすか調べる目的で、会社は社員に様々な条件の下で作業をさせて検証しました。

しかし、調査は難航し、賃金や休息を増減させても生産性にはほぼ無関係なことが判明しました。そんな中、唯一生産性に影響を及ぼしたのが作業者たちの「仲間意識」です。仲の良いグループと、仲の良くないグループで同じ作業をさせると、生産性に顕著な差が生じたそうです。「人間関係が円滑で楽しい職場であれば生産性も高まる」、この仮説は、20世紀前半には、その有効性が実証されていました。

Google米国本社でも、2012年から約4年間をかけて実施した大規模労働改革プロジェクト(プロジェクト・アリストテレス)では、「心理的安全性」が成功するチームには欠かせないという結論が導きだされています。
他社への心遣いや配慮、共感のある、精神的な安心感を持てるチームは、生産性が高まり成功しやすいという結論が出ています。

 

ソフトバンク ~企業文化への適応度を算出~

ソフトバンクは、人間関係が円滑な組織を作るために「自社の企業文化に合う人材を効率よく採用したい」と考えています。

同社は2017年から新卒エントリーシートを使った採用試験に、米IBMのAI「Watson」を使っています。
エントリーシートの言葉遣いや話題などから書き手の性格をある程度推測し、「ソフトバンクの企業文化に溶け込める人材」を抽出する目的で使用しているそうです。

仕組みを極めて簡単に言えば、既に採用され定着しているロールモデルとなる現役社員が過去に提出したエントリーシートをWatsonに分析させることで、入社希望の方の自社の企業文化への適合度が算出できるそうです。
今後、メンバー間の相性が良く雰囲気の良い職場を科学的に構成することも可能になるかもしれません。人間の性格を客観的に評価する技術はほぼ確立されているようです。

 

インフォテリア ~猛暑日は会社に来なくて良い~

IoTシステム用ソフトを開発するIT企業、インフォテリアは、気温が35度を超える猛暑日は、出社せず自宅でのテレワークを推奨しています。

1998年に同社を起業する以前はエンジニアの経験もある平野洋一郎社長は、気温が35度を超えるような日はエアコンの効いたオフィスでも作業効率が落ちると感じていたそうです。そのため「猛暑日は自宅でテレワーク作業してもらった方がいい」と判断しルールを設定しました。それ以降、同社の生産性は年々向上し、業務拡大に伴い社員数は14年度の68人から17年度には120人にまで増えたが、一人当たり売上高は同期間、2120万円から同2591万円へ上昇したそうです。独自の出社制度はその一助になっていると同社は考えています。
(参考:日経ビジネス2018.9.17)

 
 
生産性とは、単なる時間管理でもなければ仕事のスピードアップでもありません。
「産出量(アウトプット)の増加、投入量(インプット)の減少」に繋がる取組みを変化をいとわず追求していく必要があるでしょう。

上記は最新技術の導入が必要なものもありますが、出社制度の工夫などは、アナログ的な取組みです。理論は難しくても、やろうと思えば、どの企業にも挑戦できる仕組みと言えそうです。

生産性を上げることが企業存続の要因ともなっている現代。時代に適合し、変化しながら成長していくことが求められています。

 

 

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