「遺言書は何歳から書くべきなのか?」というご相談を受けることがあります。皆さんはどうお考えでしょうか。
遺言は、満15歳以上であり(民法第961条)かつ遺言能力があれば(同法第963条)遺言をすることができると法律上は定められています。一般的には、50代前後から遺言書に関心を持つ方が増えるようです。
今回のビジネスEYEでは、下記の2点についてご紹介いたします。
(1)遺言書は何歳から書くべきなのか?
(2)遺言書が無くて揉めたケース
(1)遺言書は何歳から書くべきなのか?
前出でも紹介しましたが、遺言書は15歳から作成することが可能です。では、一般的には何歳から書くことが多いのでしょうか。
下記は弊法人における相談の状況です。
【年齢層分布】
50歳代・・・ 8.5%
60歳代・・・12.6%
70歳代・・・34.7%
80歳代・・・44.2%
【年齢層別の遺言書を作成する理由】
50歳代・・・「母親の違う息子や娘」や「内縁の妻」がいるため
60歳代・・・遺産分割で揉めないため
70・80歳代・子供に遺言書を作成するよう頼まれたため
弊法人の分布をみても、50歳前後から関心が徐々に高まり、70代・80代の方が4分の3を占めるという状況です。
「母親の違う息子や娘がいる(親が離婚経験者であり前婚の時に子どもがいる場合)」、「内縁の妻がいる」といった複雑な事情がある方などは、関係性が複雑となりますので、遺言書を早めに用意しておく方がよいでしょう。
最近は、「終活」に取組むシニアの方も増えているようです。病気や認知症になってからでは遅い場合もありますので、自分にはまだ早いと考えずに、遺言書を作成してほしいと思います。
また、親子で将来のことを一緒に考える機会を積極的につくり、遺言について関心を高めてもらうことも必要でしょう。
(2)遺言書が無くて揉めたケース
都内に土地を持つAさん(80歳)は、自身が名義の土地に長男との二世帯住居を建てたいと希望していました。そこで長男は、建物についてローンを組み、二世帯同居することになりました。
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土地の評価額:およそ1億円(Aさんの名義)
土地の名義 :Aさんの名義
建物の評価額:およそ5千万円(長男が借入を行う)
建物の名義 :長男の名義
Aさんの子供:長男、次男、長女の3名
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無事に工事も終わり、Aさんと長男が住み始めてから2年後、Aさんは病気で亡くなってしまいました。遺言書はありませんでした。
長男はローンを組んでいることから、その土地と建物は自分に相続されるべきと主張したところ、次男と長女は、法定相続分を求めました。兄弟均等のため、「土地の売値が1億円なら、私達にも3300万円もらえる権利がある!」との主張でした。
長男は、現金を次男と長女に渡して事態を収めたいところですが、家を建てた直後ということで、それほどの余裕はありませんでした。
遺言書が無いことで、残された兄弟姉妹で揉めてしまいました。どのようにすべきだったでしょうか・・・。
このご家族は最終的に、長男が土地と建物を売却して現金を用意して、次男と長女に分けることになったそうです。遺言書が用意されていたら、長男の運命も、兄弟姉妹の対応も変わっていたかもしれません。
遺言書があれば、そこに書かれた財産の配分が優先され、相続が発生した際には、遺言の内容に沿って遺産分割が行われることになります。
遺言書があっても「遺留分の減殺請求」の可能性はありますが、今回のように法定相続分の半分の遺留分で済んだかもしれません。つまり遺言書があれば、自宅の売却という最悪のケースを回避できた可能性があるのです。そのため、「遺言書」が有効だと言えるでしょう。
親が認知症と判定された場合は、本人は契約などの法律行為はできません。
病気や認知症といったリスクを想定し、早めのご準備をお勧めいたします。
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