成功するM&Aの秘訣(Vol.402)


日本企業による国境を越えたM&A(合併・買収)が加速しています。
2018年1~10月の海外企業買収は件数・金額とも過去最高を更新し、累計金額は15兆9,460億円、件数は620件となっています。
日本の低金利という資金調達環境を生かしM&Aをテコにグローバル展開を急ぐ企業が目立っています。

今回は、成功するM&Aの秘訣について、下記の4点から考えます。
(1)買収前の「情報収集」を怠らない
(2)買収後の「統合作業」がカギに
(3)M&Aにより需要の変動を乗り越える企業が増加
(4)事業承継や事業拡大の選択肢の一つとしてのM&A

 

(1)買収前の「情報収集」を怠らない

一般的に、買い手企業の目線としては、M&Aは難度が高いビジネスであり、3回のうち2回は失敗するとも言われています。そうしたなかM&Aを成功に導くには、案件を実行する「前」の段階と、「後」の段階の重要性を認識し、力を注ぐことが大切です。

「前」の段階とは、事前のリスク分析のことです。早い段階から対象企業・市場と自社との戦略整合性を入念に調査・把握しておくことで、デューデリジェンスにおいて効果的な情報収集ができます。

特に海外で上場会社を買収する際は、リスク認識が甘くなりがちです。日本以上に上場子会社の独立性を重視する国が多いのに、それを軽視して結果的にグリップが利かない事例が多くあります。また、買収後に少数株主の追及に対処できていない企業も少なくありません。それに日本企業はデューデリジェンスのコストと時間を抑え過ぎであり、調べる項目を限定しすぎて、結果として見通しが甘くなってしまいます。

デューデリジェンスの効果的活用や、契約の重要性についての認識の甘さといった部分も含めて、向上の余地が大きいという指摘もあります。

 

(2)買収後の「統合作業」がカギに

一方、買収の「後」の段階とは、統合作業を指します。統合作業、いわゆるPMI(Post Merge Integration)では、両社が協力関係を築き業績や企業経営にポジティブな変化を生み出す作業が必要になります。

企業文化の大きく異なる2つの会社が共同で仕事をするというのは、想定以上の困難を伴うものです。買収側が高飛車な姿勢では、円滑な統合作業を阻害しかねません。両社が協力するという意識を醸成して、統合作業の成功に結び付けることが重要です。

足元では、活況な株式市場を受けて企業の買収価格が上昇しています。だからこそ、買収後に企業価値を引き上げる努力がより欠かせません。

また、統合作業を成功に導いた際には、達成度に応じた経営陣へのインセンティブの設定も、効果的でしょう。賞与などを通じたインセンティブの水準がまだ低いと言われる日本企業ですが、インセンティブをもっと検討してもよいと思われます。
(参考:日経ビジネス『失敗するM&A 成功するM&A』/2018.11.05)

 

(3)M&Aにより需要の変動を乗り越える企業が増加

製紙国内首位の王子ホールディングスは、2019年3月期の連結純利益が14年ぶりに最高益となる見通しです。
2007年をピークに国内の紙需要は減少が続くものの、2010年にマレーシアの段ボールメーカーを、2012年にブラジルのパルプメーカーなどを次々と買収しました。今期の営業利益の7割以上を海外で稼いでいます。事業領域の異なる会社を取り込み、次の収益の柱に育てることに成功した例といえるでしょう。

また、建設機・世界2位のコマツも、11年ぶりに営業最高益を更新する見通しです。中国など新興国での建機の需要停滞に見舞われるも、ライバルの少ない鉱山機械が利益を生み出しています。
鉱山機械事業は、昨年、米大手のジョイ・グローバル(現コマツマイニング)を買収し強化した分野となっています。環境が激変する時代にあっては、需要の変動を乗り越えることが企業には重要になってきます。

 

(4)事業承継や事業拡大の選択肢の一つとしてのM&A

近年、M&A は事業承継や事業拡大の選択肢として、ますます身近になってきました。
上場企業の傘下に入ることで事業拡大を目指すといった、自社の事業の成長のための、M&Aの活用が多くなっています。

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