「サプライズ10大予想」から読み解く日本の景気2019(Vol.407)


アメリカ・ウォール街の御意見番、バイロン・ウィーン氏が毎年恒例の「サプライズ10大予想」を発表しました。
一般投資家は発生確率30%と予想するが、ウィーン氏は50%の確率で起こると予想しているため「サプライズ」と定義されています。

しかし、ここ数年の的中確率は落ちてきているようですが、世界中が注目していることに変わりはありません。
2019年は、日本に関する直接の記述がなかったことが残念でした。また、北朝鮮問題への記述もありませんでした。

 

(1)強気ながらも、今年は控えめな楽観モード「サプライズ10大予想」

ウィーン氏の予想は、今年で34回目。例年は実数を示した予想でしたが、今年は相対的な内容にとどまり、状況が流動的であるとの見方を示しているようです。中国と苛烈な貿易戦争を繰り広げているため、さらに予想が難しくなった印象は否めません。米中両国の相互関税の引き上げにより両国経済は悪化し、日本の景気も足を引っ張られてしまうことでしょう。

【1】世界経済が弱まり、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを停止する。
・インフレは抑制され、10年債利回りは3.5%で推移。
・長期金利が短期金利を上回る「順ザヤ」を保つ。

【2】S&P500(米の代表的な500銘柄株価指数)は2019年に15%上昇する。
・穏やかな金利環境で企業収益が改善することで、株価上昇が可能に。

【3】資本支出や住宅の伸びは控えめになるが、2021年より前に景気後退は起こらない。
・消費者・政府の支出により景気拡大が続く。

【4】金融市場や米株を含む各国株式相場の回復を受け、金先物は1,000ドルまで下落。

【5】新興国市場の企業収益見通しが改善し、投資家の関心が強まる。
・株価収益率(PER)は先進国や過去と比べて魅力的。上海総合は25%高を遂げる。
・ブラジル株式市場も新たな保守政権の下で生き返る。

【6】英国のEU離脱期限である3月29日までに、合意に至らない。
・メイ英首相は留任、2度目の国民投票でEU残留が決まる。

【7】年を通して米ドル相場が2018年末の水準で安定する。
・FRBはバランスシート縮小を停止し、ドル安要因に。
・金融政策の軟化と企業の資金需要の欠如から、米国への資本流入が鈍化する。

【8】FBIによりトランプ大統領の側近が起訴されるが、大統領がロシア介入疑惑に直接関与した証拠は出ない。

【9】民主党多数の下院は、特に通商政策において期待を上回る成果を上げる。
・オバマケアの重要部分は維持され、2020年のインフラ支出実施が発表される。

【10】米市場では引き続き成長株が主導する。
・テクノロジーとバイオの企業収益改善が続き、好パフォーマンスに。
・エネルギーを除くバリュー株は経済鈍化により期待外れに。

 

(2)日本の景気にプラス要因はあるか

今年の景気をリードする役目を果たすのは設備投資となりそうです。慢性化した人手不足を背景として、省力化投資が中心となって拡大する可能性が高いです。そこに、国土強靭化のためのインフラ投資をする公共投資も加わります。

消費税率引き上げの影響は懸念されますが、プレミアム付き商品券、キャッシュレス決済によるポイント還元など、影響軽減策が大盤振る舞いされ、その効果によってはマイナス要因になりえないでしょう。

昨年のGDP(国内総生産)実質成長率は、夏の大規模な災害もあり0%台後半とみられ、日銀の金融政策動向については、現状維持となりそうです。長期金利誘導目標の引き上げは来年、もしくは再来年となるでしょう。

今後3年以内にリーマンショック後のような深刻な景気後退はないと見ていますが、ウィーン氏も控えめな予想に留まっていることからもわかるように、未来の予想に「絶対」はありえません。現状の課題や過去の失敗から、未来に向けて対策を準備しておけるかどうかが肝要です。

 

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