2019.05.16

人生100年時代の転職(Vol.422)


2019年3月期決算の発表も終盤となりました。
平成に苦戦した電機産業では、SONYと日立製作所が過去最高益を計上する一方で、富士通のように3,000人近い早期退職者を募った会社もありました。

この人員削減の対象となっているのは、45歳以上のバブル期入社組500万人で、8年連続増加した転職市場でも、この中高年層の動きが活発となっています。

また、先月18日には日本経団連と大学側が、2022年からの新卒の通年採用に合意したとの報道もありました。

雇用の流動化が進んだ結果であるとする専門家もいる一方で、雇用全体での人員不足を補うにはまだ歩みが遅いとの意見も少なくありません。

これまでの【ビジネスEYE】でも触れてきましたが、生産性向上のための「イノベーションを生む組織の実現」が目的だとすれば、転職市場の活況や新卒一括採用の見直しだけでは不十分ではないでしょうか。バブル期入社組など企業が抱える大きな人材の塊を、どう社会に還元すべきなのか、合わせて検討する必要は多いにあることでしょう。

 

今回の【ビジネスEYE】では、「人生100年時代の転職」と題して、昨今の転職概況を覗いてみましょう。
(参考:日本経済新聞/2019年5月11日)

 

(1)昨年は329万人が転職したが…

冒頭でも述べた通り、転職者数は8年連続で増加しています。2018年の転職者数は前年比5.8%増の329万人でした。

人材不足に悩む企業が中途採用を増やし続けた結果ですが、特に昨年は、ITやサービス業に人材が移っており、45歳以上の中高年が更なる高収入を狙って転職する動きも出てきています。

筆者もこの動きは、やっと重い腰が上がったという印象を持っています。では、日本で人材が流動しないのは何故なのか。新卒一括採用や終身雇用、年功序列を温存し、社員の再教育も後手に回った企業の責任は大きいと言えるでしょう。

働く側にももちろん問題はありました。「与えられた仕事をしていれば安泰に暮らせるだけの賃金が得られる。会社に頼っているほうがいい」と考える人は少なくなかったはずです。

しかしながら、平成不況の尾を引く企業には、もう終身雇用という安定を与え続ける余裕はありません。

2016年には「人生100年時代」を前提に、社員自ら人生設計を考え直す必要があるという考え方が改めて脚光を浴びました。ロンドン・ビジネススクール教授、リンダ・グラットン氏の著書『ライフ・シフト』です。

 

(2)必要なのは当事者意識

デジタル技術と医療技術の進歩で80歳まで働くことが可能になり、それを前提に「人生をいくつかのステージに分け、学びと転職を繰り返すべき」グラットン教授はそう提唱しています。

新しい人生の節目と転機が何度も出現し、「教育→仕事→引退」という人生から、「マルチステージ」の人生へと様変わりする。

運命を大きく左右する転職というライフイベントを乗り越えていくためには、圧倒的な当事者意識を持って自らのビジョンを作る、棚卸をするという循環、そしてどこに移っても適応可能な境地に達していることが大切であると言えるでしょう。

日経新聞では、京都大学教授、山中伸弥氏の「ライフ・シフト」が取り上げられていました。
ノーベル生理学・医学賞を授賞する大発見に辿りつくまでに、臨床整形外科→薬理学→分子生物学→がん研究→ES細胞研究…と多様な研究分野を渡り歩いていました。

現在では、400人以上が所属する京都大学iPS細胞研究所の経営者でありながら、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究機関で上席研究員を務めている山中氏。

自身の京都マラソン完走を条件にしたクラウドファンディングを呼びかけて、研究費の寄付を募るなど、研究環境の整備にも自ら熱心に取り組んでいます。

いろんな顔を持ちながらも、ビジョンを失わない、ピボットのような姿勢。
ビジョン実現に向けて動きを止めない意志の強さこそが、「人生100年時代の転職」に最も必要だと言えるのではないでしょうか。

 

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