2019.09.26

日本の企業統治は今(Vol.444)


2003年以降日本では、企業統治(コーポレート・ガバナンス)に関する取り組みを開示する制度が進んできました。

2006年には上場企業に対して、決算短信から切り離した「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の開示が義務付けられ、近年では株主の意見を反映し、収益性や競争力を高め企業価値を向上させるためガバナンスを強化する動きがさらに進んでいます。

取締役の報酬を決める報酬委員会や候補を決める指名委員会などの委員会を作る動きも活発化し、2018年までに、指名委員会等を設置している会社は一部上場企業の4割を超えています。

今回の【ビジネスEYE】では、日本の企業統治は今、と題して活発化した背景と、好事例を見ていきたいと思います。

(参考:日本経済新聞/2019年8月20日)

 

(1)何故今企業統治(コーポレート・ガバナンス)を議論するのか

企業統治とは、株主など企業の利害関係者が経営者を監督し、企業を統制する仕組みのことです。

海外投資家比率の上昇や東芝の不適切会計が発覚したことなどを契機に日本の企業統治はさらに強化されました。
2015年には改正会社法が施行、東京証券取引所と金融庁が上場企業に対し守るべき原則を規定したコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)を策定。
そこから社外取締役の比率が高まり、より経営者を監督する体制が整いつつあります。

2018年6月のガバナンス・コード改定では、経営者の後継候補の計画的な育成や役員報酬の透明性向上を促す内容が盛り込まれました。
2018年11月に不祥事が発覚した日産自動車にはこれまで指名委員会も報酬委員会もなく、そのことが元会長への過度な権力集中を招いたと言われています。

言うまでもなく、グローバル競争やネットワーク化がもたらす不確実な技術変化の中で企業価値を向上させるのは容易なことではありません。
未来を切り開くビジョンを掲げ、組織を統率するリーダーが必須です。

しかし、どれだけ優れた経営者も、独断専行・客観性を欠く判断・利己的といった弊害に陥る危険がありえます。
つまり、リーダーシップと効果的なチェック&バランスが現代の企業統治の世界共通の課題だと言えるのです。

 

(2)コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2018はヤマハ

義務化によって、まずは形からで走ってきたであろう企業統治の仕組みも、改革が進んできたことによって、会社のポリシーやビジョンをどう反映するかという成熟期を迎える企業が出てきています。

日本取締役協会が、コーポレートガバナンス(企業統治)を活用して中長期的に健全な成長を続けている企業を表彰する「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー」2018年の大賞に選ばれたヤマハはその最前線を走っています。

コーポレート・ガバナンスが進んできたとはいえ、日本ではまだ経営の執行役と取締役会が一体化している企業は多いです。

この点ヤマハでは、

・いわゆる「役員」には、仕事に専念するために執行役になってもらう
・社内の取締役を減らし、代わりに社外取締役を大幅に増やす

上記を大きく改革したそうです。
執行役は会社法に書かれている法定機関で、取締役と同様に、株主代表訴訟の対象にもなります。
中田卓也社長は「これなら主体性と責任を持たせることができる」と語り、法律上可能な権限を全て執行役へ移行。
一定の規模のM&A(合併・買収)や投資なども執行役だけで決められる仕組みをスタートさせました。

権限が委譲されたため、執行役は社長の判断だから盲目的に従うというような無責任な態度ではいられません。
株主の代表としての取締役会が本来の役割を果たせば、社長の方針であっても通るとは限らなくなるからです。

こうしてヤマハは「監督と執行の分離」を成功させ、取締役会は監督に専念し、執行側の判断が合理的かどうか厳しくチェックできる会社に生まれ変わったのです。大賞に選ばれるのも納得がいきますね。

活発化してきたとはいえ、東芝の不正会計や日産自動車の報酬虚偽記載など、企業統治をめぐる混乱が続いているのもまた事実です。

オリンパスの粉飾決算事件で、不正を追及しようとした社長が解任された件は、海外からは疑問視しかされませんでした。
しかしながら、ヤマハの存在は「日本ではガバナンスが遅れている」と一括りにされるような見方から前進した好事例と言えるでしょう。

 
 

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