2016年3月期に上場以来初の営業赤字に転落、その後も減損損失の計上などによって2018年3月期まで3年連続の最終赤字が続き、先行きが危ぶまれていた中古本リユース最大手、ブックオフグループホールディングス(GHD)の業績が急回復しています。
背景にあるのは宿敵でもあるフリーマーケット(フリマ)アプリ大手、メルカリからの思わぬ恩恵。中古品市場が押し広げられる一方、商品発送など個人間取引の手間を嫌ってリアル店舗に回帰する消費者が増えているといいます。
メルカリからの恩恵というのは本当なのか―
今回の【ビジネスEYE】では、この背景に迫ってみたいと思います。
(1)背景は「メルカリ疲れ」か?
ブックオフGHDの2019年4~6月期連結決算の売上高は208億円、営業利益9億4500万円、純利益は6億2500万円。
18年10月に持ち株会社体制に移行したため、前年同期との対比は開示されていません。
18年4~6月期の実績と単純比較すると、売上高は5.8%増、営業利益は3.9倍、純利益は2.9倍。
20年3月期の通期の営業利益の見込みは18億円(19年3月期比16%増)。
これに対する第1四半期(4~6月)の進捗率は52.5%なので、なかなかの好スタートと言えるのではないでしょうか。
ブックオフは18年3月期まで3期連続最終赤字に沈み、実店舗を持つ中古品買い取りビジネスの限界説が、最近まで公然と囁かれていました。
その一方で、インターネットサービス市場は右肩上がりの成長が続いています。
アマゾンジャパンや楽天などのネット通販に、リアル店舗の顧客を取られるという構図がはっきりとしています。
ZOZOなど衣料品のネット通販が浸透した影響は非常に大きいと言えるでしょう。
中古市場も、個人間で取引できるメルカリの台頭で市場が拡大。
業界専門紙によると、フリマアプリ市場は毎年伸び率2桁の成長を遂げ、17年に市場規模は2兆円を突破。
20年には2兆6000億円、22年には3兆円規模に拡大すると予測されています。
大きな要因は、上記による中古市場全体の拡大と言えるでしょうが、メルカリで出品した場合の手間に対して、面倒と感じる人が増えてきているのも一因かもしれません。
筆者も試しに使わなくなったものを売りに出したことがあるのですが、値段交渉や商品の競合も増えたために、サービス開始当初よりも売れなくなった感触があります。梱包や発送も自らやらなければならないので、非常に骨が折れました。
最初は新鮮だった発送までの手順が「疲れ」として認識され、少しずつ「持って行けば安くても引き取ってくれる」ブックオフへ顧客が戻っていったのかもしれません。
(2)ブックオフの踏ん張り
ブックオフGHDの決算短信をもう少し細かく見てみると、市場の拡大やメルカリ疲れなどの外的要因だけが復活を促したとは考えにくいです。
前年比で大きく伸びているのは、トレーディングカード・ホビー分野の128%、そして百貨店内の買取事業110.9%です。
昨年3月にブランド買取・販売のハグオールを吸収合併。
出張買取を全面的に廃止して、百貨店内の相談窓口展開にのみ一本化することで、早期黒字化を実現していたのです。
書籍の買取からスタートしたブックオフGHDは、高価格品の買取に軸足を移し、並々ならぬ踏ん張りで復調の兆しを掴んだと言えるでしょう。
他にも、2019年3月期に店舗で買い取ると同時に通販サイトに出品する仕組みを構築したのに続き、2020年3月期には本も買い取りと同時にサイトに出品、店舗とネット通販の双方で販売できる体制を整えるそうです。
さらにネット通販で注文した本やソフトメディアを店舗で受け取ることができる仕組み作りの構築も予定されています。
売上を減らさずに1年で30億弱の利益改善が実現されたところに、底力を感じる動きですね。
デジタルに食われる印象も強かったと思いますが、むしろ潤いを取り戻すことができ、不採算部門へのメスも入れることができつつあるようです。
中古本販売チェーンを立ち上げてまもなく30年を迎えるブックオフGHDと、ユニコーン第1号として上場したメルカリ。
棲み分けができることが日本経済への明るい材料になると思いますが、ネットワークとリアルの間で揺れ動く消費者の獲得に向けて競争はさらに過熱するでしょう。
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