後継者不足の名店 外食大手がM&Aで守る(Vol.458)


外食業界で、大手企業による小規模な企業のM&A(合併・買収)が広がっています。

吉野家ホールディングスや(HD)、居酒屋「磯丸水産」のクリエイト・レストランツHDが相次ぎ地域展開にとどまるチェーンを買収しました。後継者不在という経営課題に直面する小規模な企業は多く、大手が買収する動きは今後も相次ぐとみられています。

専門家の集計では、外食業界の18年のM&Aの成約件数は80件。リーマン・ショック前の06年の水準を上回っているそうです。今年も問い合わせは前年の5~6倍のペースということでした。

今回の【ビジネスEYE】では「後継者不足の名店 外食大手がM&Aで守る」と題して、その背景に迫ってみましょう。

(参考:日本経済新聞/2019年10月7日)

 

(1)外食業界の状況

クリエイト・レストランツHDの社長・岡本晴彦氏は、「後継者問題もあり後継者問題もあり『売却してもいい』という中堅や地方の中小の会社が増えている」と感じているそうです。

同社の展開ブランドは200を超えており、画一化を回避し、小規模でも集客力の高いブランドで事業を拡大する戦略に合わせて、今後もM&Aを進めていく考えなのでしょう。

いわゆる「街の名店」には、現在様々な課題が押し寄せています。
まずは後継者不足です。

経済産業省の試算によれば、全産業において2025年時点で経営者が70歳超の会社が約245万社にのぼり、うち後継者不在の会社が127万社程度存在するであろう、と言われています。(経営者の年齢分布は1995年が47歳で最も多かったのに対し、2018年には69歳が最多となっており20年間で何と22歳も上昇したことになります)この127万社のうち約30万社が2025年前後までに廃業の確率が高いとされており、「大廃業時代」がやってくるといわれています。

帝国データバンクによると2018年度の国内飲食店の倒産、休廃業、解散件数は1180件と2000年度以降では過去最多を記録してしまいました。

そのほかにも、増税による負担増や、働き方改革に紐づく労務管理、改正健康増進法による受動喫煙対策なども求められることとなり、特に事業規模の小さな飲食店には厳しい経営環境が待ち受けています。

ただ手をこまねいているのではなく、これらを解決する方法の一つとして、各社がM&Aを選ぶ時代になりつつあるのでしょうね。

 

(2)大手も街の名店もWin-Win

街の名店がM&Aによる後継者獲得で生き残りの道を得られる一方、買収する側の大手企業にはどんなメリットがあるのでしょうか。

目新しい新業態開発などが容易でない中で、地元に愛され信頼感のあるお店を手に入れることができる―
そこには、若い世代を中心に多様化した嗜好によって、大規模な外食チェーンが苦戦する背景があります。
M&Aによって選ばれる個人店を得られれば、十分な集客が見込めるということです。

また別の専門家によれば、SNSの発展により、地方であっても集客に力を持つお店も出てきているそうです。
新規出店を増やし、多くの訪日客の目に触れることで、将来の海外展開を視野に入れている企業も多いことでしょう。

地元に愛される味を種として、多店舗展開など培ってきた事業化ノウハウに結び付けることで成長の華が開けば、さらに事業承継といった形での再編が増えるかもしれません。
さらにM&Aが普及・推進されるきざしとして、これからも期待したいですね。

 
 

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